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内閣改造 夜啼きしている「伝家の宝刀」

政治評論家 髙橋利行

臨戦態勢整えた布陣に

 今、宰相・安倍晋三にとって思いは一つである。2021年9月までの残された任期中に、何としても衆院解散・総選挙を断行し勝利を収めることである。勝ち抜いて浮力を増せば、自ずと「安倍4選」への道も開けるだろうし、何よりも、いかに頑迷固陋(ころう)の野党にしても、憲法改正議論を端から拒否し続けるわけにはいかない。

髙橋 利行

 たかはし・としゆき 昭和18年生まれ。読売新聞政治部、編集局次長など歴任。

 安倍晋三は11月には戦前戦後を通じて宰相としての在位記録が歴代1位になる。だが、記録更新は宰相の眼中にない。それだけならば「ニコポン宰相」と言われた桂太郎と同じように、「永きを以って尊からず」と一笑に付される日がこないとも限らないからである。

 景気回復や日米同盟を一段と高みに押し上げたと自負する宰相は「千載列青史」の気概に満ちている。歴代自民党政権が挑みながら思うに任せなかった①北方領土返還に道筋を付ける②拉致問題を解決に導く③憲法改正を発議する――という課題の一つでも実現に漕ぎ着ける。どれも「猫の目政権」ではケリが付かない重い課題である。宰相が「安定と挑戦」を掲げた真意はそこにある。

 今度の内閣改造・自民党役員人事では、第2次政権以来、安倍政権の屋台骨を担ってきた二階俊博(幹事長)、麻生太郎(副総理兼財務大臣)、菅義偉(官房長官)のトライアングルを動かさなかった。その上で気心を知り尽くし、能力のある茂木敏充、加藤勝信らを要所に配した。四の五の煩い石破茂一派を排除した。発信力豊かな小泉進次郎を入閣させた威力も馬鹿になるまい。

 これで、いつでも衆院解散・総選挙に打って出ることができる。おかしな大臣もいると噂されているが、そう、何もかも上手くいくわけはない。考えられるベストな布陣と言える。本音を明かせば、宰相は、夏の参院選に併せて衆院選を断行したかった。ダブル選ならば、いくらか衆院の議席は減ったかもしれないが、参院の方は数議席上積みできた。両院とも3分の2ラインを確保できたのではないか。その悔いがあるらしい。

 天皇陛下の即位礼正殿の儀(10月22日)や東京オリンピック・パラリンピックなどの日程を考えれば、衆院解散・総選挙を仕掛けるチャンスはそう多くはない。「オリンピック花道論」の動きを封じ、戦いの態勢を整えなければならない。ぼうっとしていたら「チコちゃん」に叱られる。それが、今度の臨戦態勢を選択した理由である。抜き損なった「伝家の宝刀」が鞘(さや)の内で毎晩、夜啼きしている。

(文中敬称略)

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