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年金財政検証、支え手増やす制度改革を

 厚生労働省が、公的年金の給付水準見通しに関する財政検証結果を公表した。少子高齢化が急速に進む中、年金制度を維持していくには支え手を増やす制度改革が求められる。

年金水準2割弱目減り

 検証結果では現役世代の手取り収入と比べた年金額の割合を示す「所得代替率」について、2019年度が61・7%であるのに対し、6通りの試算のうち標準的なケースで47年度に50・8%に低下し、その後維持するとしている。年金水準は現在より2割弱目減りするが、法律で定めた50%は上回る。

 もっとも、試算は成長が続くことが前提で、想定を下回れば水準がさらに低下することも考えられる。マイナス成長となった場合、52年度に国民年金の積立金が枯渇し、所得代替率は36~38%程度になるという。楽観は禁物だ。

 厚労省は今回の検証で、さまざまな制度改革を行った場合の効果も試算している。厚生年金の適用拡大に関しては、適用範囲を広げるほど所得代替率が改善することが分かった。

 ただ、加入で必要となる保険料負担は労使折半だ。実施するのであれば、特に中小企業やパート労働者を多く抱える小売業などの理解を得る必要がある。

 受給開始時期の選択幅拡大についても試算している。現在は60~70歳の間で選べるが、75歳まで働いてから受け取れるようにすると、現役世代の手取り収入並みの年金額を確保できるとの結果が出た。

 現代人は10~20年前と比較し、加齢に伴う衰えが5~10年遅いとの専門家の指摘もある。65~74歳の高齢者の中には活発に活動できる人も多い。選択幅を75歳まで拡大することは、制度の担い手を増やす上で有効な方策だと言えよう。

 受給開始時期に関しては、今年度20歳の人が年金を受給する際、66歳9カ月まで遅らせれば今と同じ水準の年金を受け取れる計算だ。また、国民年金の保険料納付を今の40年から5年間延ばした場合、所得代替率は57・6%に改善するという。これらの実現に向け、高齢者が働きやすい環境をどのようにつくるかが課題となる。

 少子高齢化の中で年金制度を存続させるには、年金の伸びを抑えることも欠かせない。このために「マクロ経済スライド」という仕組みが04年の改革で導入された。

 ところが「物価や賃金が下落するデフレ時は実施しない」という決まりがあるため、これまで実施されたのは15年度と19年度だけとなっている。給付抑制のためにはデフレ時にも行うようにすべきだが、高齢者の反発を恐れる政府は及び腰だ。

 会計検査院の試算によれば、当初から毎年実施されていた場合、16年度までに基礎年金の財源に充てられる国の負担を計3・3兆円抑えられた。将来世代にとっては大きな損失だと言わざるを得ない。

負担への理解を得よ

 改革を進めるには、年金を受給する高齢者にも一定の負担がかかることを理解してもらう必要がある。将来世代に年金制度を引き継いでいく重要性を、政府は丁寧に説明してほしい。

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