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党首討論、年金の危機感共有し対処せよ

 通常国会で1年ぶりとなる党首討論が行われ、主に年金問題に焦点が当てられた。しかし、参院選の争点化を意識するあまり、不安を強調する野党側と無難に切り抜けようとする安倍晋三首相の議論は噛(か)み合わず、各党首の選挙第一声の予行に終わった感は否めない。

金融庁報告書が焦点に

 討論の冒頭で「国民が年金の何に関心を持ち、老後の何に不安を持っていると思うか」と立憲民主党の枝野幸男代表が問い、首相は「年金によって老後の生活を賄うことができるかどうか、果たして年金が持続可能なのかについて不安を持っていると思う」と答えた。この認識は与野党共通だろう。

 少子化により生産年齢人口は減少していく。その中で「平均寿命が延びていくので給付期間が延びる」との首相の説明通り、どの政党が政権を担当したとしても厳しい難題である。

 野党の4党首は、金融庁の有識者会議が老後に備えて2000万円の資産が必要とする「高齢社会報告書」を取り上げた。

 当初、報告書に野党は「そんな貯蓄は無理な人が多い」と問題にして批判。麻生太郎金融相が報告書の受け取りを拒否すると、党首討論では「諮問しながら受け取らないのは何ごとだ」と異口同音に批判した。これでは反対のための議論だ。

 首相は「報告書によって大きな誤解が生じた。大切なことは年金生活者の生活実態は多様で、その多様な実態にしっかり対応していくものになっているかだ」と釈明した。

 「多様」の中身にまでは触れなかったが、働く支える側と給付を受ける高齢者ら支えられる側のバランスを見直す中で、年金に頼らなくていい人に給付を減らすケースも想定されよう。むしろ少子化時代には、そのような人を増やす努力が現役世代の負担軽減のために求められるだろう。今回の党首討論には、そのような働く若い世代にいかに負担を掛けないようにするかという視点が欠けていた。

 この点、老後に備える資産形成の呼び掛けなどは、銀行、証券、保険など金融企業が営業宣伝しており、生涯年収を試算してはさまざまな商品を開発している。民間では普通のことであり、報告書への批判や拒否は過剰反応だ。選挙を前にした政治の弊害と言えよう。

 野党党首らの主張の通り、政府が2004年の年金改革で掲げた「100年の安心」に不安が生じていることは否めない。マクロ経済スライドによる給付引き下げもやむを得ない面もあろう。

 ただ、野党側には09年から当時の民主党政権を担当した議員らがいる。財源確保の困難さに直面して公約を実現できず、最後は社会保障予算増加のために当時野党の自民、公明両党と消費税率引き上げを決めた。

扇動すべきではない

 国民民主党の玉木雄一郎代表が「5年前の財政検証は崩れている」「36年後に積み立ては枯渇する」と主張し、野党席から拍手が起こった。これに首相は「拍手が起こったことは遺憾だ」と述べた。危機感は扇動するのではなく、与野党が共有して問題に対処していくべきだ。

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