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IR推進法よりもパチンコ禁止法を

 保守系の言論人の多くは、「国際情勢は緊迫しているのに、昨今の国会はモリカケ問題ばかりをやっているのはけしからん」と批判してきた。私もその主張にまったく同感である。しかし、緊迫する国際情勢を前にして政府が通常国会の最後に通したのは、カジノを含む総合リゾートを推進する法律(IR推進法)であった。これは、モリカケ問題を騒ぐ野党とは異なるものの、ある種の平和ボケではないだろうか?
 
 2020年に開催される東京オリンピックに間に合わせるためには、今国会がタイムリミットという事情があるのかもしれないが、そもそも日本がカジノを含んだリゾートを造る必要があるのだろうか。好調なインバウンドで勢いにのる観光産業のさらなる隆盛を目論む政府が、カジノを造ればラスベガスやマカオのように莫大な金が落ちると想定しているとすれば、能天気と言わざるを得ない。21世紀に入って以降のカジノ解禁で比較的成功したと言われるシンガポールでさえカジノ収入は4000億円にしか過ぎない。この額は都市国家シンガポールにとっては大きくても、500兆円を超えるGDPを有する日本にとっては微々たる額だ。しかも、日本のカジノがシンガポール並みに成功するとは考えにくい。シンガポールは税制優遇などでアジア中の富裕層を取り込み、年間旅客数6000万人を誇るアジアのハブ空港を持っている。これに対し、カジノ誘致に手を上げる大阪府や沖縄県は、富裕層どころか貧困層が多い上に、空港の年間旅客数もシンガポールの半分にすら届かない。

 もちろん、カジノが日本経済にとって微々たる影響しか与えないという計算は、政府内でとっくに済ませているはずだ。それでも、この法律を通常国会最後に通したのは、カジノ解禁を、大阪府と沖縄県に対する政治的飴玉にする狙いがあるのだろう。どちらの地域も経済的な先行きは暗いし、政治的には自民党が常に苦戦している(大阪は維新の牙城で沖縄は未だに左翼が強い)。カジノという飴玉は、日本経済全体に大きな意味はなくても、両地域のカンフル剤程度にはなるし、自民党にとって当分の間は有利な政治的材料になる。

 しかし、ギャンブルがらみで法律を作るのであれば、IR推進法ではなく、もっと本質な法律を作るべきだったのではないだろうか。日本に10数兆円規模ではびこり、貧困層の生活をますます悲惨なものにしているパチンコを規制する法律だ。IR推進法案をおとりとして提出し、左翼政党からの「ギャンブル依存症が…」というお決まりの反対論が出たところを逆手にとって、IR推進法の中に「特定地域以外でのパチンコを含んだ私営ギャンブルの取り締まりを強化する」という条項を入れる。それを行っていれば我が国のギャンブル依存症問題は大きく改善したはずである。また、北朝鮮への金の流れを封じるという点においても、緊迫する国際情勢の中で通す法律に相応しいものになったのではないだろうか。

 安倍政権と言えども、それが出来ないのが自民党という政党の限界なのかもしれない。

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