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財務次官だけを非難する卑しさ

 官庁の中の官庁と言われる財務省官僚のトップである財務省事務次官がセクハラ疑惑で辞任した。セクハラの対象は部下ではなく、自分を何度も取材した放送局の記者だそうだ。この事件が表す意味は、とてつもなく大きい。

 いわゆる「セクハラ」を規制する法律は、基本的には男女雇用機会均等法と考えられていた。同法第11条は以下のように規定されている。


「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」


 条文を読めば明らかだが、セクハラ防止義務は雇用者にある。つまり、財務省事務次官の性的言動よりも、それを受けている女性記者の状況を放置したテレビ朝日に、より大きな法的責任があるのだ。

 昨今のビジネスマンがセクハラに気を使って汲々としているのは、部下や同僚へのセクハラ行為の放置が、勤めている企業の法令義務違反となるからである。企業は従業員が他の従業員にセクハラ行為を行わないように研修を実施し、日々監視している。昭和の時代に許された女子社員への性的な言動は今では許されないのだ。

 そして、その憂さを晴らすように、変わってしまった世の中を嘆くがごとく、ビジネスマンたちは夜の街に繰り出し、そこで働く女性を相手に性的な言動を繰り返している。もちろん、性交は売春防止法で禁止されているし、ダイレクトな性的行為も風俗店でしか許されない。だが、水商売においても、その業態によってボディタッチくらいは許されたり、セクシャルな話題を振る程度のことは認められていたりする。もちろん、何が許されるかの判定権限は店側にあり、それを逸脱した者は「出禁」となる。「出禁となった客は店の敷居を跨げなくなるのが夜の街のルールだ。

 さて、財務省の事務次官が、テレビ朝日の記者に「おっぱい触っていい」などの言葉を投げかけたという疑いで辞任した。事実ならば下品な行動であることは間違いないが、それをもって辞任にあたるか否かについては疑問が残る。私は、いわゆるマスコミ関係の人間が、水商売の女性にこのような言葉をかける姿を何度も目撃しているが、それが理由で彼らが辞任したという話を聞いたことがない。風俗嬢は胸を触らせるのも仕事のうちだが、水商売の女性は胸を触らせるのは仕事ではない。しかし、客と店員という力関係があるので、店主が客を「出禁」にしない限り、彼女たちは耐えるか辞めるかの二択を迫られる。

 このマスコミ関係者たちと、財務省事務次官のどこに違いがあるのだろう。何一つ違わない。違うのは女性の職業だけである。水商売の女性は「女を売り」にしているのだから少々の性的言動は我慢すべきだが、誇り高き我々の仲間である女性記者への性的言動は一切ゆるさない。テレビ朝日よりも財務省事務次官に攻撃を加えるマスメディアの姿勢は、職業差別意識が背後になければ理解できない。それこそ人品卑しい行いではないだろうか。
まして、これを利用して政権を倒そうなどと目論んでいるとすれば、その卑しさは財務省事務次官の比ではない。

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