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イラク日報、「戦闘」を倒閣材料にするな

 一部野党が、陸上自衛隊のイラク派遣時の日報を、安倍内閣を倒閣するための材料として利用しようとしている。内外情勢が多難な折、国政の重要課題をそっちのけにして政府や官庁のあら探しばかりに注力しているのは遺憾である。

表記が問題視される

 当初、日報の開示要求に対して、防衛当局は「見つからない」と答弁している。この日報は国政上、国家の安全確保、外交上の問題を論議するのに役立たない。その一方、日本や他の派遣国の安全保障に関する実務上の問題が絡んでいる。従って、公表すべきものではないのだ。

 日報で問題視されているのは「戦闘」や「交戦」の表記が複数出てくる点だ。イラク復興支援特別措置法は自衛隊の活動地域を「戦闘行為が行われることがないと認められる地域」としていた。だが現代戦は、かつてのような「前線」「後方」などはないのである。

 昨年は、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報に「戦闘」と記載されていたことが問題となった。PKOの実態は、国連の「PKOマニュアル」に目を射通せば分かりやすい。しかし、PKOへの自衛隊派遣の是非をめぐる国会論議で、政府は「マニュアル」を秘密文書に指定した。ちなみに、この「マニュアル」は、国連では秘密指定はない。PKOを開始した当時のハマーショルド国連事務総長が「軍隊でしかできない任務」と言明しているのは、PKOが戦闘に巻き込まれる公算が大きいからである。是正すべきは、紛争当事者間の停戦合意を条件にした「PKO参加5原則」をはじめとする自衛隊の海外派遣の在り方である。

 今回の日報問題をめぐって、文民統制(シビリアンコントロール)の強化が必要との声も出ている。だが、過度の文民統制は、スターリン、ヒトラーのように軍事組織を支配の道具に使う「シーザリズム」を招くことになる。また、文民統制は現在の日本に見られるように、防衛省内局官僚による自衛隊支配とは無縁である。それは政府、立法府、最高裁判所の三権によるコントロールである。

 一部野党の政治家は安倍政権を打倒して、政権の座に返り咲こうとしている。だが、民主党政権が短期間で国民の信を失ったのは他でもない。国政を運営する能力が欠けていたためである。国民が求めているのは、自民党に代わって政権を担う能力を持った政党の誕生だ。こうした政党は国政上の重要課題で、現実的な代案を示すことが要求される。

メディアは愚行やめよ

 主要メディアによる一部野党への同調姿勢も、民主主義国家においてメディアに与えられた使命を損なうことになる。過去、わが国では欧米諸国同様に、新聞は大(おお)新聞(高級紙)、小(こ)新聞(大衆紙)の二つに分類されていた。福沢諭吉創刊の「時事新報」や徳富蘇峰創刊の「国民新聞」などの大新聞が凋落(ちょうらく)したのは、政界や財界のあら探しに熱中したことが主因の一つとされている。現在の全国紙は大新聞凋落後に、高級紙的性格を取り入れて成長したものである。愚行を繰り返すべきではない。

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