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上方歌舞伎に情熱を注ぐ、坂田藤十郎さん死去

「曽根崎心中」 のお初と共に「生涯現役」、60年間で1400回演じる

上方歌舞伎に情熱を注ぐ、坂田藤十郎さん死去

「曽根崎心中」でお初を演じる坂田藤十郎さん=2014年4月、東京・歌舞伎座(松竹提供・時事)

 「江戸歌舞伎と上方歌舞伎の両方が栄えてこそ、歌舞伎は隆盛になる」。12日死去した坂田藤十郎さんは常々、こう語り、自身のルーツである上方ゆかりの作品に情熱を注いだ。

 中でも、1400回以上演じた「曽根崎心中」の遊女お初は、21歳の時に復活上演に取り組み、藤十郎さん自身が作り上げた役。60年以上にわたって人生を共に歩んできた19歳のヒロインへの思いは深かった。演じるたびに、「初演の時の気持ちと回を重ねてからの気持ちは変わらない」と語り、その言葉通りにみずみずしく体現した。

 お初と恋人の徳兵衛が心中に向かう場面で、お初は徳兵衛の手を引きながら花道を去っていく。強い意志を持ったお初は戦後の新しい女性像と重ねられ、高く評価された。2014年に「一世一代」と銘打った歌舞伎座での公演に際しても、「お初とさよならする気持ちは一片もないです」と別れを惜しんだ。

 「一生青春」が座右の銘だった藤十郎さん。最後の舞台は、昨年12月の京都・南座の顔見世興行だった。昭和、平成、令和と時代は変わったが、「歌舞伎が大好きなんです。肉体が滅びるまでやり続けたい」と語っていた通り、生涯現役を貫いた。(時事通信編集委員・中村正子)

 演劇評論家の渡辺保さんの話 藤十郎さんを東京で初めて見たのは扇雀時代。当時、美人の典型はうりざね顔とされていたが、本人はきれいな丸顔だった。その後、出世作となる「曽根崎心中」のお初を演じて爆発的なブームを起こした。それまでとは違う新しいリアルな女形として一つの時代を作った。現在の歌舞伎界の大看板である最長老が亡くなり、物寂しさを感じている。

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