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漫画家の魚乃目三太さん、「食」通じた描写

失われる記憶、漫画で次代に、世代超えて共感

漫画家の魚乃目三太さん、「食」通じた描写

インタビューに答える漫画家の魚乃目三太さん=7月30日、東京都千代田区(時事)

漫画家の魚乃目三太さん、「食」通じた描写

漫画「戦争めし」の1場面=©魚乃目三太(秋田書店)2014

 数多くの漫画で描かれた戦争。作者も読者も「戦争を知らない世代」となる中、身近なテーマを通じて切り取った作品が共感を集めている。漫画家魚乃目三太さん(45)は、短編で戦時下の食べ物にまつわる人間ドラマを描く「戦争めし」や、特攻隊員を支えた食堂を舞台にした「ちらん」で、食から得られる小さな幸せを通じ、戦争の悲惨さを問い掛けてきた。

 デビュー以来、食をテーマにした作品を多く手掛けてきた。「戦争もの」を描くきっかけは、テレビで偶然目にした旧日本兵の老人が描いた1枚の絵。武器すら打ち捨てた兵士が飯ごうを握り締めてジャングルを逃げ惑う姿に「なぜ最後の持ち物が飯ごうなのか」と気になった。それを機に調べるうち、今まで光の当たらなかった戦時下の食生活の興味深いエピソードを次々見つけ、「戦時中のひもじさや食べた喜びなら自分でも描けるのでは」と思ったという。

 8月発売の「戦争めし」最新刊では、原爆投下直後の長崎で、両親や兄弟、生まれた町を全て失った青年が、炊き出しのおにぎりに涙を流し、生きる意欲を取り戻した実話が登場する。魚乃目さんは「寒い時、空腹の時の温かいご飯のありがたさは今も昔も変わらない。だから共感できるし、当時に思いをはせるきっかけにもなるのでは」と語る。

 絵柄は、戦争と対極にあるようにほのぼのと優しい。「作風もあるけれど、子供や若者の手に取ってもらうことも意識した」と言う。生々しい描写が避けられがちな風潮を懸念し、「恐ろしくて、見るのもつらかった昔の戦争映画のような資料は、今はテレビでも博物館でも見られない。漫画ならどんな表現も工夫次第」と意気込む。

 「グルメ漫画は批判されないか。自分が戦争を語れるのか」と葛藤もあったというが、作品は戦争を知る世代にも評価され「この話を残してほしい」と情報を寄せる「語り部」も多い。「この瞬間にも失われていく話がある。75年の時間の重みを感じる」と話す魚乃目さん。「受け継いだ話を自分なりにかみ砕き、何とか次代に伝えたい」と決意を込めた。

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