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「被災者に役立つ情報を」、発行継続に使命感

熊本県人吉市の地元紙が避難所へ記者が配達

「被災者に役立つ情報を」、発行継続に使命感

避難所に届けられた人吉新聞=9日午後、熊本県人吉市(時事)

 球磨川の氾濫で甚大な浸水被害を受けた熊本県人吉市の地元紙が、社員や配達員が被災しながらも新聞の発行を続けている。「被災者に役立つ新聞を届けたい」。熊本県に大雨特別警報が発表されてから11日で1週間。片付けに追われる住民や避難所に身を寄せる人々を紙面が勇気づけている。

 人吉市の市街地は4日朝の氾濫で浸水被害に遭った。「新聞は刷れるだろうか」。1958年創刊の地元紙「人吉新聞」(発行部数1万3500部)の石蔵尚之社長(55)は慌てて駆け上がった自宅3階で7年前の社員研修を思い返していた。

 東日本大震災の翌日から手書きの新聞を発行し続けた宮城県石巻市の石巻日日新聞。2013年、人吉新聞の社員約40人は石巻を訪れ、地元紙の心構えを教わった。

 女性記者ら5人と配達員17人が自宅の浸水などの被害を受けたが、川から約600メートル離れた社屋は無事だった。石蔵社長は「住民に必要な情報を伝えなければ」と編集部長に紙面づくりを指示。記者は通信障害で現場から原稿が送れなかったため、USBメモリーに記録して車で会社に届け、何とか当日の紙面ができ上がった。

 4日付夕刊のコラムはこう締めくくられた。「皆で希望を失わずに歩を進め、艱難(かんなん)を乗り切る覚悟を共有しよう。私たちは決して負けない!」。休刊日を挟んだ6日からは、700部以上を記者5人が手分けして、市内9カ所の避難所に配達した。

 700人以上が身を寄せる避難所「人吉スポーツパレス」では9日、被災者が新聞の到着を心待ちにしていた。1人で避難した女性(70)は人吉新聞の購読者で、「避難所でも夜、ゆっくり読んでいる」と笑顔。妹尾英司さん(64)は「道路の開通や店が開いたかなど、地元の新聞でないと得られない情報がある」と話す。

 本来は発行しない12日も新聞を刷り、避難所や自宅にいる被災者らに社員総出で配達する予定だ。石蔵社長は「住民は疲れてきている。復興に向け、勇気づけられる情報を伝えていきたい」と力を込めた。

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