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アマゾン熱帯雨林地帯に暮らす先住民に迫る危機

違法金採掘や森林伐採の無法者、新型コロナ感染拡散の恐れ

アマゾン熱帯雨林地帯に暮らす先住民に迫る危機

空撮する航空機に矢を放とうとする、身体を赤く染めた文明と接触を持たないとみられるアマゾンの先住民たち=ブラジル政府の先住民基金が2008年5月公開(AFP時事)

 新型コロナウイルスが、ブラジルのアマゾン熱帯雨林地帯に暮らす約43万人の先住民族の存続を脅かしている。文明社会と一定の距離を置く先住民集落では感染者100人強、死者は10人に満たないが、過去には外部から持ち込まれた疫病で多くの死者を出しており、新型コロナによる「大虐殺」に戦々恐々としている。

 「先住民は感染症への免疫力が低いため、非常に危険な状況だ。多くの集落は保健専門家や医者がいない」と警鐘を鳴らすのは北西部ロンドニア州ポルトベリョに本部を置く「カニンデ先住民環境保護協会」の専門家ネイジンニャ・スルイさん。集落在住先住民の最初の感染は、医療関係者によってもたらされたが、ネイジンニャさんが危惧するのは、密林奥深くに分け入るガリンペイロ(違法金採掘人)の存在だ。

 富のために先住民殺害をちゅうちょしないガリンペイロや違法森林伐採人ら「無法者」は、右派ボルソナロ政権による「先住民軽視」の政策に加え、新型ウイルスまん延後に公的機関の監視態勢が弱まったことで、奥地への侵入を活発化させている。「彼らとの接触や、ウイルスが付着した物を触ることで先住民に感染が広がる。もしイゾラド(文明と接触のない先住民)と接触すれば、間違いなく『大虐殺』だ」。ネイジンニャさんの訴えは悲痛だ。

 実際、南米先住民は過去にもウイルスの脅威にさらされてきた。現在のペルーなどで栄華を誇ったインカ帝国は16世紀にスペイン人の侵略者が持ち込んだ疫病で滅亡が決定的となった。

 アマゾンでもたびたび外界から持ち込まれた病が深刻な結果をもたらしてきた。最近では1970年代~80年代、はしかやマラリアで有力部族ヤノマミに多くの死者が出たことが知られている。

 北西部アマゾナス州最深部に暮らすトゥカノ族に属するニウド・フォンチス氏は「(約900キロ離れた州都)マナウスまでの飛行機はない。感染者が出れば大惨事だ。60歳以上の人口も約3割いる」と不安を打ち明けた。唯一の交通手段である河川通航の警備を強化している。

 政府は現在、先住民以外の人々が集落に接近することを禁じている。しかし、ガリンペイロらは従わない。ボルソナロ政権は感染予防措置より経済再開を優先しており、多くの部族が人口を大きく減らす危険におびえている。(サンパウロ時事)

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