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飄々とした演技で、圧倒的な存在感を示す

映画「命みじかし、恋せよ乙女」、女優・樹木希林の遺作

飄々とした演技で、圧倒的な存在感を示す

樹木希林最後の作品で海外作品デビュー作となった「命みじかし、恋せよ乙女」 ©2019 OLGA FILM GMBH,ROLIZE GMBH&CO.KG

 ドイツ・ミュンヘン。酒に溺れ仕事も家族も失ったカール(ゴロ・オイラー)は、離婚した妻と娘に会うために妻の家に行ったのだが、酔っていたカールはたたき出され、自分の家に戻る。

 ある日、突然、玄関の呼び鈴が鳴る。扉を開けるとユウ(入月絢)と名乗る日本人女性が立っていた。父親のルディ(エルマー・ウェッパー)と関わりがあるようだが、カールにはうっすらとした記憶しかない。

 それでも、風変わりな彼女と過ごすうち、いつしか自分の人生と向き合うことになる。しばらくして、忽然(こつぜん)と彼女がいなくなる。ユウを捜しに訪れた日本で、ユウの祖母(樹木希林)と出会い、そこで悲哀と驚きに満ちた家族の物語を聞かされるのだった。

 女優・樹木希林が最後に選び、最初で最後の海外出演作品となった。

 出演シーンは、後半部分。いつものように飄々(ひょうひょう)とした演技で、圧倒的な存在感を示す。自分を見失ったカールを優しく見守る。その演技は、実に温かいものだった。

 神奈川県茅ケ崎市の旅館茅ヶ崎館で撮影が行われた。国の有形文化財に指定された宿で、樹木が、かつて杉村春子の付き人をしていた時に訪れていた場所でもある。

 監督は、ドイツ人のドーリス・デリエ。親日家として知られ、これまで30回以上、日本に滞在している。そのデリエ監督が、樹木が「命みじかし恋せよ乙女」と歌う「ゴンドラの唄」に「愛、喪失、家族、生きる事の美しさと残酷さを描いたこの作品において彼女の唄は私たちに遺してくれた最後のメッセージのようだった」と振り返る。

 8月16日よりTOHOシネマズシャンテ他にて全国順次ロードショー。

(佐野富成)

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