高木菜那、スピード女子マススタートで金
最終周で冷静に前へ、佐藤の不運な敗退で独りの戦い
最後の直線。力の限り腕を高く振り上げ、脚を滑らせた。「ここで行かなきゃいつ行くんだ」。出し尽くして一番に駆け抜けたゴールライン。「やったあ」。高木菜は叫びながら何度も両手を突き上げた。
1時間余り前の1回戦。別の組で滑った佐藤が転倒に巻き込まれ、不運な形で敗退した。今季好成績を収めたワールドカップ(W杯)同様に、決勝は2人で勝負を仕掛けようと事前にさまざまな戦略を練っていた。プランはあっけなく崩れた。
しかし、高木菜は冷静だった。マススタートのレース経験が豊富で、2016年12月のW杯でも独りで戦って2位に入ったことがある。「やるしかないと腹をくくった」。不測の事態にもすぐ頭を切り替えた。
エストニア選手が序盤から飛び出し、2番手以降はけん制し合う展開。優勝候補の一人、シャウテン(オランダ)をぴたりとマークした。ラスト4周を切ったところで集団のペースが一気に上がり、高木菜もシャウテンの後ろについたまま順位を上げた。シャウテンが先頭、高木菜が2番手で最終周へ。勝負を分けたのは第2カーブだった。
マススタートは、他の種目では練習用となるインコースのさらに内側にあるコースで滑ることができる。「シャウテン選手が前のカーブでちょっと膨らんでいたので、これはインに切り込めると思った」。身長155センチの小柄な体と、練習で取り組んだショートトラックの経験を生かし、急なカーブをきれいに回り切って前に出た。
「佐藤の分まで頑張ろうと思った」。いつも以上に強い気持ちを込めて、駆け引きを制した。世界距離別選手権やW杯では2位が最高。気骨ある25歳が、大舞台で頂点に上り詰めた。冬季五輪の日本勢で史上2人目、女子では初めてとなる1大会で2個の金メダルを手にした。(時事)
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