ワシントン・タイムズ・ジャパン

黒部峡谷鉄道トロッコ列車同乗記

 黒部峡谷鉄道の起点・宇奈月に入った。きょうは10月10日。聞けば昨日から急に気温が下がったという。これはいかん。片道1時間20分の間、乗車するトロッコ列車は、当然吹きさらしの車両。薄手のブルゾンのみで、嫌な予感がする。

 宇奈月駅に入ると、既にトロッコ列車が待機していた。ナローゲージの機関車は小柄だが、精悍で力強い。1台が300馬力、重連で10両程のトロッコ客車を引っ張り上げる。かなりの人数が一度に乗るが、人間は「軽い」のだ。

 黒部峡谷鉄道の歴史は意外に古い。黒部川電源開発のために「黒部専用鉄道」として大正12年に敷設工事が開始。大正15年に猫又まで開通。その後順次路線を伸ばし、昭和12年に終点の欅平(けやきだいら)まで20.1kmが開通している。当時は工事専用線だったものが、昭和28年に関西電力が観光客のために旅客営業も開始した。昭和46年に旅客専用線として関西電力から分離し、黒部峡谷鉄道として引き継がれ、現在に至っている。

 宇奈月駅を出るとすぐに、沿線最大の橋「新山彦橋」を渡る。右手に黒部川を見ながらゆっくりと進む。黒部川が膨らんでできた宇奈月湖は、昨日の雨のせいで水は濁ってる。すぐに最初の駅「柳橋」に着くが、列車交換のみで客扱いはしない。

 列車は右に左に急カーブを描きながら進む。ずっと先の鐘釣(かねつり)駅付近までは、右手に黒部川、左手は「壁」だ。トンネルも多く、中は狭くてゆっくり進むため、ディズニーランドのアトラクションに乗っているようだ。

 終点の欅平まで、中間駅は7つあり、列車交換を頻繁に行う。時刻表を見ると1時間に2~3本走っているので、多いはずだ。列車がすれ違うたびに、乗客は互いに手を振り合う。駅員もサービス精神旺盛で、必ず手を振って送り出してくれる。

 黒部渓谷鉄道の社員は約200名、そのうち機関手や車掌などの乗務員は50名だそうだ。うち女性の車掌が3名いる。女性の機関手はいないそうだ。

 区間中、最も勾配がきついのは、鐘釣~欅平間で、最大勾配50パーミル(1000メートルで50メートル上る)。あの碓氷峠が66.7パーミルなので、想像以上の急勾配だ。「坂の上りと下りでどちらが時間がかかりますか」の質問には、「あまり変わりませんよ」の答え。急勾配では、逸走(止まれなくなること)が怖いので下りの方に時間をかけることがあるのだ。ただ「車輪が滑ることがあるので、機関車には砂撒きの機能がありますよ」とのことで、そこは本格的だ。

 駅部分を除いて全線単線だが、これだけ本数が多いので気になったのが保安設備。「かなり前から自動閉塞のATCですよ」と当然といった答え。

 走り出して10分も経たないうちに、寒さで凍えた。10月でも防寒具がいる。もっとも、窓付きの密閉型の車両もあり、そちらに乗ればいいのだが、それではトロッコ列車の醍醐味を味わえない。11月になると、さすがに密閉車両主体の編成になるが、「(吹きさらしの)トロッコに乗りたいお客様がいるので、2往復はトロッコを残しているんですよ」とのこと。マニアならトロッコに乗るべきだ。

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