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「台湾の光」400年の歴史を演出 台湾総統就任式典

若者の開拓力、時代を映す鏡に

 1月の台湾総統選挙で圧勝した民進党の蔡英文氏(59)が20日、台北市内の総統府で李登輝元総統(93)らが見守る中、総統就任宣誓を行い、国民党の馬英九氏(65)の後任として第14代総統に就任した。

 台湾では過去8年間の馬英九総統率いる国民党政権で対中傾斜の政策を強めたことで景気低迷、失業率増を招き、中台の軍事バランスが崩れることで3度目の政権交代を促した。

 蔡英文氏は1月の総統選で当選を果たす時、「両岸(中台)関係は現状維持を保つ」と公約。総統就任式では「1992年の中台窓口機関による会談は若干の共通認識に達した歴史的事実を尊重する」と述べ、「一つの中国」を認めることを迫る中国にも一定の配慮を示し、「台湾人意識」の高まりに合った台湾本土派路線を打ち出した。

 式典では総統、副総統の就任宣誓の後、「台湾の光」をテーマに過去400年の台湾の歴史を紹介する舞台演出を行い、人民、土地、民主に絞った歴史回顧で女性初の総統誕生となる就任式を盛り上げた。

 記者(深川)は、炎天下、前日から予行演習を取材。亜熱帯の原色バランスが工夫され、過去400年の歴史をどう総括し、演出するか、民進党政権の歴史認識を理解するステージとなった。

 日本統治時代については、無辜(むこ)の民衆を弾圧する日本軍人の姿だけでなく、戦後の国民党による弾圧も劇化してさらりと紹介。国民党前政権が日本統治時代の負のイメージを歴史教科書でも強めていたが、民進党による親日政権となり、教科書で示す対日関係も改善が見られそうだ。

 一方で、中華民国の初代総統である蒋介石を顕彰する中正紀念堂では「抗日戦争の真相」特別展が6月24日まで開催中で、主催したのは馬英九前総統。日中戦勝初期の1937年に起きた南京事件について中国共産党が主張する30万人虐殺説を堂々と表記し、抗日においては国共合作で歴史認識は軌を一にしていることから、新政権とは歴史認識が大きく違っている。

 台湾の潘文忠教育部長(教育相に相当)は21日、馬英九前政権が改定した「中国色」が色濃い学習指導要領を廃止すると表明。馬英九前政権では日本をめぐり、「日本統治」を「日本植民統治」と表記を変え、慰安婦問題では「強制的に慰安婦にされた」としていたが、抗日史観が強い国民党の台湾色を薄めた内容が「教育の台湾化」へ大きく変更される。

 パレードで登場する山車(花車)には2014年3月に中台貿易協定に反対する学生らが立法院(国会)を占拠した「ひまわり学生運動」を象徴するものも登場し、同学生運動のテーマソングも若手バンドが熱唱。幅広い世代、台湾の少数民族との和合も含め、細かい政治的な配慮を尽くして演出した。

 就任式典では台湾と外交関係を持つ22カ国の代表や59カ国の友好国などから約700人が出席予定。日本からは日本交流協会の今井正理事長や日華議員懇談会の古屋圭司幹事長(衆院議員)ら12人の国会議員を含む252人の大型来賓団が参加し、日台の絆の深さを参加者数でも表している。

 来賓として参加した、日露戦争を勝利に導いた第7代台湾総督・明石元二郎の孫・明石元紹氏は「日本との縁が深い台湾が自ら民族自主で若い世代に向け、新たな政権がスタートすることを心からお祝いしたい」と目を潤ませながら話した。

(写真と文=深川耕治)

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