«
»

脱炭素社会の救世主は「水素」?

自動車や船舶のエンジン開発進む

 「ブゥンブーン、ブゥウォーン、バリバリ、ブゥウォーン!」
 爆音とともに疾走する青白黄色の迷彩色で彩られたカローラスポーツがカーブに差し掛かると、カーマニアたちが一斉にカメラのシャッターを切った――。

 5月22日から行われた24時間耐久レース。注目を集めたのは、トヨタ自動車の豊田章男社長自ら運転した水素エンジン搭載の自動車だった。音を聞いただけでは違いが分からないほど、電気自動車でなくても化石燃料と同様の「クルマ」を楽しめる可能性を見せつけた。

 政府は4月22日に2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を13年度比46%減とする新目標を発表。資源の乏しい我が国はエネルギー供給のうち、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が8割以上を占め、そのほとんどを海外に依存している。東日本大震災後は、エネルギー自給率は10%を下回るまでになった。そこで注目されているのが、水を電気分解して製造できる「水素」というわけだ。

 水素を活用した乗り物は、自動車以外にも広まっている。鉄道網を有するJR東日本は南武線武蔵溝ノ口駅に再生可能エネルギーと水素を活用し、電力を安定的に供給できる自立型水素エネルギー供給システム「H2One」を稼働中。日立製作所、トヨタ自動車などと連携し水素燃料と蓄電池のハイブリッド車両も開発している。

 一方、川崎重工とヤンマー、ジャパンエンジンコーポレーション(J-ENG)は5月18日、船舶の水素エンジン開発を担う「HyENG(ハイエンジ)株式会社」設立を発表した。このように、各業界が脱炭素社会実現と生き残りを懸けた戦いをしているのだ。

 水素をいかにクリーンに製造し、化石燃料よりも安価で大量に流通させられるかなどの課題もあるが、脱炭素社会へ水素が救世主となる日も近いかもしれない。

(写真と文・森 啓造)

4

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。