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世界を覆い尽くせるか バーチャルマーケット5

ワールドビヨンド

 12月19日から、冬の寒さに震える街並みを他所に仮想世界では一つの大きなイベントがスタートした。バーチャルコミュニケーションサービス「VRChat」内での展示即売会「バーチャルマーケット5」である。2021年1月10日までという長い会期を引っさげて戻ってきたイベントは、まさしくそのターゲット層を「世界」へとシフトさせていた。

 この記事では企業展示が行われているワールド(場所)のうち、世界中の史跡を巡る「ワールドビヨンド(World Beyond)」とタイトルのついた3種類のワールドを紹介する。

 

今度のエントランスはこじんまりとした「部屋」から始まる

全ての始まりは小さな部屋から ワールドビヨンド エントランス

 ワールドのスタート地点はどこかの家の玄関先。そのまま目の前にある階段を上がって2階の自室らしき部屋へと移動する。壁にはバーチャルマーケット5のポスターやヘッドマウントディスプレイらしき白い機械。壁にかけられたギターにベッドと割とどこにでもある内装だ。しかし、テーブルの上には骨のような形状の貝が光を放ちながら鎮座している。これに手を触れる事が今回の異世界の入り口だ。触れると青空が透けて見えるガラス玉の様な空間へと移動し、バーチャルマーケット5のロゴと掲示された各イベント団体のポスターが目に入る。

 なお、VRChatの内情をあまり知らない方向けの説明となるが、イベントを主催する団体と書いてはいるものの法人格である事はなく、大体は個人か有志の集まりが自主的にイベントを開いている。特に毎週土曜日などの週末にはイベントが多数存在するため、自分が探したいコミュニティを見つけるのに一役買っている。

 話を戻して、エントランスのポスター群の左右と奥にそれぞれ進める場所が存在し、向かって左側はバーチャルマーケットの宣伝ポスターの観覧が出来るフロアとなっている。向かって右側にはバーチャルマーケット開催に向けてのクラウドファンディングに出資したユーザーが明記されたフロアが存在する。これは毎年から続く恒例行事となっている。

 今回、出展企業は移動先の場所で背面を向いた際に一覧で表示されており、また携わった人員についても同じ場所に掲載されている。そういった点では今回は控えめと言えるだろう。そして、奥に進めば企業出展会場であるワールドビヨンドとSkyCube Left/Rightに移動可能なポータル、その奥に一般ユーザー展示会場である「Virtual Showcase」「オービタル」「Default Cube」「メテコレプカ」「祝祭のマルシェ」「キュリオシティ」へと行けるポータルが立ち並ぶ。

 その上には部屋にあったものと同じホネガイの貝殻が光を湛えながら浮かんでいる。
もちろんユーザー自身が好きなWorldを検索して移動する事も可能だ。ここからいよいよワールドビヨンド(世界を越える)の解説に入ろう。

 

ストーンヘンジから抜けたら凱旋門、その先に広がる街並みは圧巻の一言

 

ディズニーストア店内。ファンも思わず唸るグッズが沢山!

夢の国へと誘う自由の像への石門 ワールドビヨンド Day

 最初に降り立ったところはイギリスにある環状列石のストーンヘンジ。星々が天に描くサークルを見ながら正面の明るい街並みへ足を踏み入れると最初に目に入るのはフランスの観光地であるエトワール凱旋門。凱旋門と言えばこのエトワール凱旋門を指すことが多い。凱旋門を潜って左を向けばピサの斜塔が、右を向けばシャンゼリゼ通りが見え、更に控えめながらモスクワの観光地赤の広場がお目見えする。

 この構図で分かった方も多いだろうが、今回の企業展示会場のコンセプトはまさに「世界を越える」会場だ。シャンゼリゼ通りにある建物の1階には「Virtual Market Café」と題された店舗があり、入り口の凸の形をした置物が印象的なブースである。ここは凸版印刷株式会社のブースとなっており、店内では一際目を引く「#かなえるプロジェクト バーチャルマーケット店」出展かつ少年ジャンプ掲載の北斗の拳のキャラクター「ハート様」がお鍋を楽しむ様子を見る事が出来る。記念撮影ももちろん無料でサンプルアバターも試着可能だ。

 シャンゼリゼ通りを通り過ぎ階段を上がると青い建物が目立つ通り「シャウエン」に入る。モロッコの観光地であるこの通りの中にはオンラインゲーム「ファンタシースターオンライン2」のキャラクターアバターの展示ブースや株式会社U-NEXTが手掛けるバーチャルYouTuberキズナアイを特集するブースなどが存在。

 そのまま道なりに進み突き当りから右手の坂を登っていけばトルコのアナトリアに存在するカッパドキアと、そこから真後ろに振り返って聳え立つ未完の大聖堂サグラダ・ファミリアを拝む事が出来る。

 突き当りの左手側にはエジプトのピラミッドが見え、正面にはOculus from FACEBOOKと株式会社ビックカメラが協力して設営した世界的ギタリストMIYAVI氏のパフォーマンスが閲覧できるブースが見て取れる。

 突き当りを振り返った右斜め後ろ側にはKDDI株式会社のコンセプトショップ「GINZA 456 Created by KDDI」がお目見え。地下一階にあるフロアではARグラスや端末を通して閲覧できるコンテンツが楽しめる。

 そして道をひたすら奥へ奥へと進むとナイアガラの滝と自由の女神が見えてくる。この自由の女神は鎖を振り切って豪快にジャンプしているが、その側にあるのが今回のイベント出展企業の中では恐らく一番ネームバリューがある企業となっている。ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社が手掛ける「バーチャルディズニーストア」が鎮座しているのだ。

 この店舗のあるエリアと店舗への入り口に利用規約を明記し同意事項を確認する看板がある程の念の入り様にただならぬ雰囲気を感じるユーザーも多いと思うが、それもそのはず。非常にクオリティの高い製品をVRChat上で閲覧できる様に再現しているのだ。

 入り口の先に広がる店内には公式グッズをそのまま持ち込んだかの様な精緻な3Dモデルの数々と、バーチャルマーケット4で仮実装されていた「VRChatから商品の購入サイトを開くことが出来る機能」を搭載した値札が設置されている。

 購入可能な商品の他に公式グッズも完備しており、また店内奥には『ディズニー ツイステッドワンダーランド』「マーベル」を楽しめるエリアもあり、ディズニーやそれに関連するコンテンツが好きな方ならば必ず満足出来るフロアとなっている。筆者は「UniBEARsity(ユニベアシティ) 」のぬいぐるみの余りのモフモフ具合にやられてしまい、是非3Dデータでも欲しくなってしまうくらいの衝動に駆られたりする程であった。

 なお12月26日以降の本日ではクリスマス仕様からお正月仕様へと更新され、門松やお正月のダルマを模したグッズなどを展開している。季節感を忘れない心配りはさすがと言わざるを得ないレベルである。

 

タ・プローム遺跡とマリーナベイサンズ、どちらも東南アジアなのが共通点である

夕焼けが映し出す黄金の都市圏 ワールドビヨンド Evening

 日差しが少し傾いた夕方、降り立った場所はカンボジアにあるタ・プローム寺院。出た所で振り返れば観音菩薩像がユーザーを見つめてくれる暖かさを感じつつ、このワールドの散策を始める事になる。

 遺跡を出た目の前にはシンガポールの名物であるマリーナベイ・サンズとマーライオンが出迎えてくれる。目の前にある青いポータルを潜れば、マリーナベイ・サンズの特等階へとひとっ飛びである。

 移動先にはDMM GAMES提供の「合同会社EXNOA/ミストトレインガールズ~霧の世界の車窓から~」ブースがあり、同ゲーム作品内に登場するキャラクターのアバターや動く2Dイラストを見る事が出来る。それだけではなく、ミストトレインガールズでは主要な乗り物である「魔導列車」に乗車可能であり、上空から会場全体を一周して見る事が出来る空中旅行を楽しむ事が可能となっているのだ。ただし、途中下車は出来ないため、きちんと時間のある時に乗られることをおすすめする。

 列車から降りた先、ポータルを通じて移動したエリアには株式会社ニッポン放送が手掛ける放送ブースとキャンペーン活動「ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」にちなんだ「Kis-My-Ft2」「SixTONES」メンバーがデフォルメ頭身のアバターとして挨拶をしてくれるブースが併設。

 またそこから先にはDMM GAMESで提供されているStudio MGCM制作の「MGCM/マジカミ」のキャラクターをアバター化したブースがあり、同作品のファンにはたまらない出来となっている。

 その横にある巨大な女の子の顔は、メディカル系企業である株式会社OCDが手掛ける「ロポりこんちゃんに食べられる体験を通して、医療の学びを深める」というブースである。

 何を言っているのか分からないという読者の皆様も居られるだろうが、これは簡易的に人体の構造や消化の様子を体験できるブースとなっておりきちんと口から入り胃や腸を経由して「出される」までを味わう事が出来る。どちらかと言えば味わわれる側なのだが。

 次のエリアには広告宣伝手法が良くも悪くも話題を掻っ攫ったゲーム「ビビッドアーミー」のブースへの入り口が左手側に見え、移動先では漫画を視聴したりミニゲームを楽しむ事もできる。向かって右手側手前はPolygonal Mind(ポリゴナルマインド)という開発スタジオのブースとなっており、このスタジオは提供するアバターがVRChatリニューアル後の通常時選択可能なアバター群として登録されている等VRChat大衆化に向けて重要な実績を持っているスタジオである。

 そして右手側奥の赤いX字に刻まれた模様のあるブースは格闘ゲーム「ギルティギア」シリーズでおなじみのアークシステムワークス株式会社のブースである。ゲーム内の様子を再現可能なギミックが存在する他、作中に登場するキャラクターのハイクオリティなアバターデータを購入可能となっている。

 エリア奥のポータルから移動した先にはインド北部の墓廟であるタージ・マハルが鎮座し、振り返れば中東随一の金融都市ドバイのブルジュ・ハリファとパーム・ジュメイラを見ることが出来る。夕日を受けて金色に輝く姿はまさに絢爛豪華さを表すEveningの会場にマッチしていると言えるだろう。

 

夜の日本の名物とサイバーな街並み、そして大怪獣ゴジラが進撃する

和と東洋と世界の中心の先にあるモノ ワールドビヨンド Night

 すっかり日もくれた夜、ワールドのスタート地点は日本によくある温泉だ。満月に兎を彫り込んだような珠や大鳥居、富士山、東京タワーを一望しながら螺旋状の通路を降り、東京駅下部に突き出したポータルをくぐる。飛ばされた先はネオン煌めく未来都市の様な空間と、そこに聳え立つ大怪獣ゴジラがいの一番に目に入る。またビル壁面のディスプレイには様々な製品のCM映像が放送されている。

 やや危なげに都市への道を降りると右手に見えるのが株式会社ビームスの出展するブースだ。オシャレ感漂うストアの一階はBEAMS×バーチャルマーケット公式グッズが存在し、2階にはゴジラやスクウェア・エニックスのニーア・オートマタ、ももいろクローバーZとコラボしたTシャツを展示。

 さらに2階のスロープからはJAXAとコラボレーションしたロケットが発射可能となっている。一体何のブースかと突っ込まれるだろうがそういうものだと思って頂きたい。

 順路左手側に見えるビルの中には東宝株式会社が手掛けた「ゴジラ」を展示するブースとなっており、公式監修のゴジラの3Dモデルがブース内に屹立。他にもゴジラの頭、足と尻尾のセットなどキャラクターにフィットさせやすい小物も充実。また、フロア中央には巨大な足型があり、三葉虫の彫り込まれた足型はまさしくゴジラの巨大さを物語るものとなっている。

 そして最大の目玉はフロア奥にあるエレベーターから向かうことが出来るエリアだが、このエリアで得られる体験はぜひ作品を未視聴の方にもオススメしたいクオリティのものとなっている。是非ともこのブースには足を運んでいただきたいというのが筆者の主張である。

 道なりに進んで右側にあるのが株式会社東京マルイのブースである。ここは一階がモデルガン展示場とシューティングレンジとなっており、VR環境を推奨するがソフトガンでの射撃を楽しむ事が出来る。2階には銃のモデルをはじめとした様々なコラボ製品が展示されており、「バイオハザード」、「ガンゲイル・オンライン」、「ドールズフロントライン」、「99 GIRLS BULLSEYE」、「アサルトリリィ」、「彩まよい」といったタイトルとのコラボ製品がここぞとばかりに詰め込まれている。モデルガンを取り扱う東京マルイならではの一風変わったコラボレーション品は一見の価値ありである。

 都市を抜けると奥に見えるのはアジアの観光名所の建物を再現したアジアブース、そして螺旋を描く道に沿うような巨大なジャパニーズタワーが目を引く。これは五重塔を上下対象に何重にも連結させたような奇妙な建造物となっており、これに沿う形で道が下へと続いている。

 道沿いには株式会社タカラトミーが展開するトレーディングカードゲーム「WIXOSS(ウィクロス)」のアニメ化を宣伝するタイアップ製品などが展示されたブースが存在。またPCパーツブランド玄人志向のゲーミングシリーズGALAKURO GAMINGの宣伝ブースも設置されており、なんとグラフィックボードをモデリングして展示している。隅から隅まで眺める事の出来る貴重な機会が与えられるのである。

 出展の報に驚いた声も挙がった「株式会社大丸松坂屋百貨店」のブースでは、年末年始のごちそうグルメが非常に出来の良いモデルとなって展示されている。浮世絵をモチーフにしたおしゃれなブースの中央には、公式キャラクター「さくらパンダ」の看板やモデル配布サイトへのリンクがあり、VRChatにも導入可能なモデルデータがダウンロード出来る。

 またブース内の高品質なグルメは蟹であったりアイスであったりワインであったりピザであったりと、VRChatのユーザーが主に活動する夜間や深夜帯を狙い撃ちするかの様に空腹感を増幅させるレベルのクオリティである。

 ジャパニーズタワー沿いの螺旋の道をひた走る、もしくは近隣のポータルに入ることで下層の砂浜に出る事ができ、海を隔てた向こうにはシドニー・オペラハウスが打ち上がる花火に照らされている。砂浜の上には3つの企業ブースがあり、一番手前側にあるのは株式会社グッドスマイルカンパニーのブースだ。一時期ブームとなった「ブラック★ロックシューター」が腰掛ける店舗の中には主力フィギュア製品である「ねんどろいど」が500体も並んでおり、そのどれもが近寄って見ることが出来るというなかなか無い体験を味わう事ができる。

 また向かい側にはWeb上で活動を展開する2.8次元アイドル「アイマリンプロジェクト」と同じくはんなま系VTuberとして活動する二人組ユニット「ナギナミ」を合わせた「アイマリンプロジェクト&ナギナミちゃんねる」が展示。3Dモデルが閲覧できるほか、今までの活動を振り返る年表も展示。彼女たちの事を細かく知る事が出来る。

 3つ目のブースは株式会社LDH JAPANに所属するクリエイティブ・ユニット、PKCZ®(ピーケーシーズ)の紹介ブースである。ぱっと見た目は赤い立方体の集まったブースだが、中に入ればエモーショナルなサウンドとライティングでテンションが上がる事間違い無しのブースとなっている。

 砂浜の奥には最近ではウルルと呼称されるオーストラリアのエアーズロックへ通じる道があり、その奥へ通じるルートも存在するみたいなのだがこの記事ではここから先には触れないでおく。是非とも参加者が最後まで余韻に浸れる様に歩いていって欲しいと願ってやまない。あの余韻を誇る空間は間違いなく本イベントの中で一番心を安らげるものであると言える。

 

ホネガイから飛んだ先のエントランスは落ち着いた雰囲気

先々への不安も感じる船出 世界を相手にどこまで拡大出来るか

 今回のバーチャルマーケット5はこれまでと違い、英語圏への進出を目的の一つとして掲げているためか一般ユーザーの展示ブースに英語圏向けの物が存在したり公式でも英語での説明を至るところに記載するなど宣伝に力を入れている事が端々から伺えた。

 しかし、その一方でこれまで協賛企業であったセブン&アイグループが今回不参加である他、これまで参加をしてきた一般ユーザーの中にもワールド作成時の制限事項等から参加を見合わせる声が上がるなど、これまでの姿勢に対しユーザーや企業両面の変化が見られるのもまた特徴となっている。

 また今回は以前まで使用できた拡張メニューが当初利用出来ない状態でありワールド内の移動が手軽には行えず、またマップ機能の不具合など新環境での開催に現在の状況が追いついていなかった印象は拭えない。更にカタログ掲載時の内容の取り違えや展示ブースのバージョンの差異、ギミックによる床抜けの発生といった事柄もあった為か一部ユーザーからは不安も囁かれている。

 現在ワールド内拡張メニューに関する不満点については概ね解消している段階ではあるが、早期実装が実現できなかった点はやはり痛手と言えるだろう。世界を相手取るイベントを開催するからには、是非とも開催側も盤石の布陣を以てイベントをもり立てて行って欲しい所である。

 現状ユーザーメイドのコンテンツを主軸にしたイベントでここまで大規模ながら開催を続けており、外出の必要が無いままに参加できる大規模イベントという現環境への親和性と独自性を持つバーチャルマーケット。

 様々な側面から挑戦的な開催となった今回のデータを糧に、更にVRイベント界隈を盛り上げる一つの篝火であるのだから。

©Disney
©2020 MARVEL

(撮影・執筆:市村 龍二)

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