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仮想世界と現実が繋がる「多層現実」へ そば茶フェス レビュー

 VR(バーチャルリアリティ)を使って蕎麦屋の来店者とVRChatユーザーが交流するイベント「そば茶フェス」が3月23日、東京都文京区本郷にある蕎麦屋「手打そば 田奈部」で行われた。
 これはVRコミュニケーションツール「VRChat」に造詣が深い店主が営業時間の合間を縫って、手打そば 田奈部を利用しているVRChatユーザーと交流を行うもの。
 イベントの特長として、現実でユーザーが蕎麦屋に集うだけでなく、VRChat上でも手打そば 田奈部を模した場所を構築し、VRChat上でも同時並行でパーティーを開催するというユニークな試みである。
 なお当コラムサイトでは過去に店主の田名部さんへ取材を行っており、その様子についてはこちらでご覧頂ける。

 店舗には既に7~8人のVRChatユーザーが集っており、各人各様に名刺交換や会話を繰り広げていた。
 窓際の席では取材記事でも取り上げた店員の「まんじゅう」さんがギターを構えており、また田名部さんも撮影用の機材をセッティングしていた。
 ここで田名部さんから語られたのは「VRChatの様子を合成して撮影する」という新しい試みだ。このそば茶フェスでの最も大きな要素がこれであり、まず参加者はカメラと連動するソフトをスマートフォンに導入する。そのソフトを起動して、会場の一角を撮影すると、そこにVRChat上の会場に来ている人々が合成されて写り込むという仕組みとなっている。指定された一角の横に立てば、現実世界にいながらVRChatの人々との合成写真が撮影出来るのだ。

 セッティングが終わりイベントがスタートすると、早速、蕎麦屋にあるパソコンにVRChatの画面が表示された。この様子はYoutubeでもライブ配信されており、また蕎麦屋にあるパソコンにカメラが接続されている。その映像はVRChat上の蕎麦屋で再生されているため、現実世界とVRChatの様子は遅延こそあるものの双方向でコミュニケーションが取れる仕組みである。

 まずはVRChat上でユーザーの1人である「JOHNNY YAMADA」さんがブルースを披露。現実の会場にもスピーカー越しに歌が伝わり会場内のテンションは上がった。
 続いてまんじゅうさんが現実の会場内とVRChat内でお題を募集し、それに則ったオリジナルソングを披露。最後には持ち曲である「つよつよPCのうた」を歌い、VRChat内からも歓声が上がった。
 最後にイベントの締めくくりとして、現実内の蕎麦屋にいる参加者とVRChat内のユーザーとの合成写真の撮影となった。
 参加者からは、「画面上ではそこにいるのに、実際にはそこにいないという不思議な感覚だった」という感想や「配信されたパソコンに現実世界を映した画面が映っているのが凄い」などこれまでのイベントにありがちな「画面を見ているだけ、音を聞いているだけ」とは全く違う体験に対する驚きの声が聞かれた。

* * *

 多くのイベントで披露されてきた「拡張現実」という、仮想世界の物を現実世界に落とし込むアトラクション。仮想世界の向こうでもリアルタイムでイベントに参加している人物を、現実世界のイベント参加者と合成させるというこの技術が一般人にも利用可能なものとして確立された事は非常に先駆的である。
 それと同時に、本来なら同時には交わることのない仮想世界と現実世界が同じタイミングでカメラを通して同じ体験を共有する事が出来るという事も、また同様にこれまで無かったイベントの形の一つである。
 やりようによっては現実世界を下地に仮想現実がそこに乗る、いわば「多層現実」と呼べる様な仕組みは今後のイベントやパフォーマンスでますます取り入れられる要素であろう事は想像に難くない。
 ここ2年程で大きく勃興してきたVR業界だが、この先どこまで技術が伸びてゆくのか目が離せない業界になりそうだ。
(文章・写真・動画:市村龍二)

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