ワシントン・タイムズ・ジャパン

VRとバーチャルYouTuberで示された「ミライ」のゲームの形―東京ゲームショウ2018

 9月20日から9月23日までの4日間、千葉市の幕張メッセで世界最大級のゲーム見本市「東京ゲームショウ2018」(コンピュータエンターテインメント協会、日経BP社主催)が開催された。
 あいにくの悪天候にも関わらず来場者数は過去最多の29万8690人を数え、年々ゲーム文化の裾野が広がっている事を示していた。
 ビジネスデイ・一般公開日の両日ともに各ブースでゲームを試遊できる整理券は完売が相次いだ。
 今年は家庭用ゲームにとって激震の年となるかもしれない!と予感させる兆候が見え隠れしていた。国内のゲーム会社は既存タイトルの顧客を喜ばせるためか、過去に発売した作品のリメイクに力を入れている状態で、完全に新しいタイトルを起こしてブランドとして育てあげるような野心的な作品はあまり見られない状況だ。
 その一方で、スマートフォンを中心としたソーシャルゲームは、海外のゲームメーカーのタイトルが日本向けの作品を展開するという攻勢をかけている。この市場で国内の大手ゲームメーカーの宣伝も余り多く見受けられなかったのは、力不足に感じられた。

“e-Sports”にターゲット

 家庭用ゲームもソーシャルゲームも、これからの市場を“e-Sports”に定めているのは昨年以上に強く感じられた部分だ。ビジネスデイではe-Sportsをいかに国内に認知させていくかについて激論が交わされており、ゲームによる対戦をエンターテイメントとして、新たな商圏として設定したい思惑が見えている。
 しかし、その一方で、e-Sportsブースで行われているタイトルは「見たらわかる」プロレスの様な惹き付け方を意識したものが中心だった。ゲーム文化そのものを知らないユーザーを、いかに「面白いものがやっているし一度見てみたい」と惹きつけるかが今後の鍵となるのではないだろうか。

時代は“xR”へ

 今年一番の躍進を見せたのは、VR(仮想現実)ブースとインディーズゲーム(個人や中小企業制作のゲーム)コーナー、並びに専門学校の紹介ブースだ。
 VRブースは昨年もある程度展示があったが、今年はビジネスデイも一般公開日も昨年の比にならないほどに混雑を見せており、試遊のための整理券は開場5分で完売。
 VR機器に対応したゲームセンター向けの機材には長蛇の列ができ、それ以外にも各企業が手がけるVR機器対応の新しいデバイスやゲームにはどこも人だかりが出来ていた。
 今年は「狭い空間でどうやってダイナミックに動いているように見せるか」という問題に対して各企業の違ったアプローチを見る事ができ、EXPVR社のゲーム“BE THE HERO”は腕を大きく振る事でゲーム内を動き回れる様にしており、Cybershoes GmbH社の“CyberShoes®”は両足の靴の裏に装着する事で、椅子に座って足を動かしてゲーム内を移動できる様になる機器をKickstarter(大勢の個人からの出資)で資金調達をし開発(https://www.cybershoes.io/kickstarter-jp)。

 またインディーゲームのブースでは、VR機器に対応した作品を手がけるサークル(個人による創作者グループ)から「2年前にも出展したが、今年パンフレットを受け取った人はその時の7倍近くで、遊んで頂いた方も大変多く驚いている」といった声が聞かれた。
 専門学校の制作物を紹介するブースでも、家庭用ゲームやソーシャルゲームが中心であった昨年と違い、今年はVR対応のゲームが軒並み目立っている状態である。
 上記の3種類のブース群はいずれもが超満員の人だかりとなり、ゲームとしては「VRによるエンターテイメントを体感させる」事に重きを置いている。
 今後新しい客層を開拓していくとしたら、VR機器を活かした体感型のコンテンツというのはとても伸び代があるものだと感じられた。

 他にも今回の東京ゲームショウ2018では昨年までと大きく違う傾向として、YouTube上でアバター(仮想の身体)を用いて動画配信を行う「バーチャルYouTuber」に対しても注目が集まっている。
 会場内ではバーチャルYouTuberとして活躍している「富士葵」さんやライブ配信サービスShowRoomで人気の「東雲めぐ」さんが会場に向けての生放送を行い、ブース内での生放送の映像を通して会場内で多数の参加者と交流していた。
 またビジネスデイのフォーラムではバーチャルYouTuberの「電脳少女シロ」さんと「ばあちゃる」さんをゲストに招致し、司会者と3名で仮想空間上でのインタビューを開催。
 バーチャルYouTuberが昨今のニュースでたびたび取り上げられる事も取り上げながら、これまでとは全く違う新しい環境で顧客を開拓しようとする企業やコンテンツを提供する個人の“バーチャルYouTuber”の増加に
 会場からは驚きの声と目の前で繰り広げられる仮想世界でのインタビューに興味関心を示す様子が見て取れた。

 過去最大の人手となった東京ゲームショウ2018は大盛況のうちに4日間の全日程を終えて幕を閉じた。
 そして今回は特に“e-Sports”や“VR”といったキーワードに注目が集まる事となった。
 これまで画面を通して見るだけであったゲームの形を一つも二つも超えていく要素が全面に出てきており、そしてゲームを遊ぶプレイヤーたちもそういった新しい形のエンターテイメントを待ち望んでいる事が見て取れた。
 今までとは全く違う形でのアプローチを迫られる企業と、手探りでありながら未知の領域へ踏み出していく顧客と、どちらも同じ様な暗中模索でありながら少しずつ前進をしているのではなかろうか。
 まだまだ国内での認知度はそこまで高くない“e-Sports”と“VR”、ここに今後の遊びの世相と経済を占う鍵が眠っているのかもしれない。

(文・写真・動画=市村龍二)

xR:VR(仮想現実:完全な仮想世界)、AR(拡張現実:現実世界に仮想の物体を投影する)、MR(複合現実:現実世界の情報を仮想世界に反映させる)といった要素をひとまとめにした呼称

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