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日本は外交で指導力発揮を

拓殖大学国際日本文化研究所教授 ペマ・ギャルポ

アジアの平和守る覚悟示せ
超党派議員による活動にも期待

ペマ・ギャルポ

拓殖大学国際日本文化研究所教授
ペマ・ギャルポ

 アメリカのバイデン新政権は多くの日本人の予想を裏切って、少なくとも現段階においてはトランプ前大統領同様か、それ以上に中国に対しては強硬な姿勢を取っている。ある意味ではトランプ政権以上に計画的戦略的に中国に対応をしていると言えるのではないだろうか。

 4月中旬、日米のそれぞれの新政権のトップが対面で会談し、日米の同盟の強化を図ると同時にその存在を世界に示した。菅首相にとっては外国首脳として新政権下で最初にホワイトハウス入りを果たし、日米の特別な関係を確認すると同時に、両首脳間の信頼関係を構築することに成功したと言える。首脳会談後の共同記者会見でも菅首相はいつにも増してはっきりと物を言っていたように思う。

強い中国批判は躊躇か

 ただ関係筋から漏れてくる話によると、日本側はウイグル問題、香港問題など人権問題に関して、当初アメリカが望んでいたような強い中国批判は躊躇(ちゅうちょ)したようである。

 また台湾についても、やや曖昧な台湾海峡の平和と安定という表現にとどめ、より鮮明な表現を結局出せなかったのは、私としては少々残念に感じる。日本国内ではそれなりの評価をされているようで、包括的には私も今回の訪米は菅首相としては成功であったと思う。

 今後予定されている先進7カ国(G7)の会議などでは、日本もより明確な立場を示すことを期待したい。特にアジアの最も成熟した民主国家として、アジアの平和と安定に寄与する覚悟とリーダーシップをぜひとも示していただきたい。日本国民のみならずアジアの人々も日本が国際社会において大きな役割を果たすことに期待し、注目していることを忘れないでほしい。

 両首脳がクアッド(日米豪印)の重要性やインド太平洋構想の強化など多くの問題については積極的な姿勢を示すことにも合意したことは、特にアジアの国々に対しても歓迎すべき事柄であった。多くの人々の記憶にもあるように、自由で開かれたインド太平洋構想の提唱者は安倍前首相であり、日本が戦後初めて取ったイニシアチブでもある。故に安倍前首相の継承者として菅政権には存在感を発揮し、有言実行の態度を貫く責務が存在している。

 最近、日本の議会もアジアの自由と人権を守る立場で、中国のウイグル、チベット、内モンゴルならびに国内における人権弾圧に対し、以前に増して活発に議員活動を展開している。例えばチベット議連、ウイグル議連に加え南モンゴル関係の議連も誕生した。また元防衛大臣・中谷元氏を中心に対中政策議員のグループなどが香港、ミャンマーなどの人権問題などについても真剣に取り組もうとしている様子は歓迎すべきことであり、これらの活動が一時的な花火で終わらないように心から期待し祈っている。

 超党派で中国の人権問題などを批判する決議を議会に提案する動きもあったようだが、ウイグルにおけるジェノサイド(集団虐殺)という表現に対し、特定の政党が証拠不十分として反対し、その試みは実現には到らなかったようだ。しかし、世界中に目を向ければ、他の国々は周知の事実として中国のウイグルに対するジェノサイドを批判する決議を採択している。日本だけが知らないという状況は不自然であるので、継続的に努力することを望む。

 私は何も日本がアメリカをはじめとした国々に追随すべきだというのではない。むしろ日本が独自の優れた外交を展開し、リーダーシップを取ることは、日本の利益となろう。日頃から日本が強調する自由・民主・人権など普遍的な価値に基づき、日本ならではの外交を展開する時期に来ているのではないだろうか。

ミャンマーで仲介役を

 今現在ミャンマーでは、軍が近代兵器を使い、非武装の無抵抗な一般市民たちを大勢殺戮(さつりく)している。日本は軍側と民主勢力双方に太いパイプを持っていることを自負している。であれば日本こそがこの両者の仲介に立ち、少なくとも軍による殺戮の中止と民主的な選挙を尊重するための対話構築の場をつくるべきだと考えるのは私だけではないはずである。

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