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ネット環境整備で過疎化対策を

沖縄大学教授 宮城 能彦

田舎での仕事や授業可能
コロナ後の一つの生活様式に

宮城 能彦

沖縄大学教授 宮城 能彦

 今、多くの大学でZoomやTeamsを使った遠隔授業を行っている。しかし私は動画での配信は行っていない。いや、行うことができない。なぜなら、私たちの想像以上に、パソコンや自宅にWi―Fi環境がない学生が多かったからである。

遠隔授業で格差顕在化

 その原因の第一は、やはり経済格差。国立大学や東京の大きな私立大学ならともかく、地方の私立大学生の場合は、私の周りだと、パソコンとWi―Fiの両方がある家庭は半分以下である。

 そのために、多くの学生がスマートフォンで授業を受けることになる。しかし動画配信だと、たちまちギガが切れてしまう。従って、動画配信は演習(ゼミ)や必修科目が優先とならざるを得ないのである。そのために私の場合は、講義予定内容をテキストデータ(文章)で配信している。しかし、それも大変な作業である。

 それでも、スマホから大学のサイトが開けないとか、スマホで添付ファイルが見られないという相談が後を絶たない。今は、それらに対して一人一人メールで連絡を取り対処方法を伝えていくしかない。私の知っている先生の多くが既に悲鳴を上げている。

 最近はパソコンを持たない(持てない)学生が多いことは私も知っていた。それは経済的な理由によるものだろうと思っていたが、先日、国立大の工学部の先生から話を聞くと、経済的に豊かな方である大学の理科系の学生でも、先生の方から指導しないとパソコンを購入しないらしい。すなわち、世の中が、ITとかICT(情報通信技術)等と言っている間に、若者は全てをスマホで済まそうとする傾向にあったのである。

 そういえば、新学期の大学生協の稼ぎ頭であったパソコンが、新学期でも目立たなくなって久しい。スマホでリポートを書く学生も珍しくなく、私の目の前で、私がキーボードを叩(たた)くのと変わらないスピードでスマホを使って文章を打つ学生もいた。ひょっとしたら、一定以上のWi―Fi環境さえあれば、動画配信の遠隔授業でもスマホで十分なのかもしれない。

 学校や大学が遠隔授業を実施することによってネット「格差」が顕在化した。しかし、例えばパソコンを支給するのは無理でも、全ての家庭においてWi―Fiが無料で使えるようにすることは可能であろう。そのことによって、かなりの格差を埋めることができるのではないだろうか。その点においては文部科学省がかなり力を入れているようだが、それでも対象は「手を挙げた」市町村だけである。

 実は10年ほど前に、沖縄のある村の集落に無料Wi―Fiを飛ばしてムラの活性化につなげようとしたことがある。そうすれば、集落にある民宿やコテージに長期滞在する人も増えてくると予想したからだ。移住を希望する人も出て来るかもしれない。しかし、ノマドワークとか、テレワークという言葉がまだまだ一般化していなかったこともあり、行政の理解が得られず、もう一歩というところで実施できなかった。

 もし、これを機会にネット環境が整備されていくのなら、離島や過疎地から先に実施していくというのはどうであろうか。「効率」という点からは話にならないかもしれないが、今こそ発想を逆転させる必要もあると思う。

 今回のコロナ対策では、大都市ほどその対応が難しそうである。人口が集中している地域は、コロナ感染予防にとって不利である。

人口の地方誘導後押し

 一方で、テレワークで対処できる仕事も意外に多かったと感じている人も少なくないであろう。だとするのならば、ネット環境の整備さえ行えば、人口の地方への誘導、離島や中山間地の過疎化対策にも追い風になるのではないか。普段は自然に囲まれた田舎で仕事や授業を受け、月に1度出勤あるいは出校する。かつてはごく一部の人だけができる生活であったが、これからは一般化できるかもしれない。

 多くの場で論じられているように、コロナはさまざまなことを顕在化させ、afterコロナ、withコロナの時代をどう生きるかということが問われ始めてきた。まだまだ先は見えないが、それでも私たちが、自分の現場の足元からひとつひとつ具体的に考え対応していくことで未来は切り開けると思う。

(みやぎ・よしひこ)

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