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危機に接し露わになる「魂」

加藤 隆

問われるいのちの根幹 「人間に問う存在」に目覚めよ

名寄市立大学教授 加藤 隆

 「死んでいる生者」「生きている死者」という言葉がある。「死んでいる死者」「生きている生者」が我々の常識なのだが、確かにそのようなこともある気がするのだ。

 「旅人の宿りせむ野に霜降らば我が子羽ぐくめ天(あま)の鶴群(たづむら)」。この歌は万葉集に収められている遣唐使の我が子を送り出す母の歌である。1300年以上前の母であるから、生物学的にはすでに亡くなっている。しかし、切々とした真心は言霊のごとくであり時空を超えて感動を与えてくれる。まさに、「死んでいる生者」ではないだろうか。他方、妻の死や病気を苦にして「脳梗塞の発作に遭いし以来の江藤淳は、形骸に過ぎず、自ら処決して形骸を断ずる所以(ゆえん)なり」と書いて自死したこの作家は、すでに死を帯びていたのではないだろうか。

虚無感が示唆するもの


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