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台湾への武力使用反対決議を

平成国際大学教授 浅野 和生

国会に対中牽制を求む
平和主義国家日本の姿勢示せ

浅野 和生

平成国際大学教授 浅野 和生

 1年前、2019年1月2日、中国の習近平国家主席が、「台湾同胞に告げる書40周年」の重要演説において、台湾を「一国二制度」で統一しようとする意志を改めて鮮明にした。あれから1年、年末まで続いている香港市民の自由と民主を求める街頭行動は、習近平主席が謳(うた)った「一国二制度」の現実を、命懸けの闘いで国際社会に示している。

 1997年7月1日に始まった、中華人民共和国の一部に組み込まれた香港の「一国二制度」は、最初から寿命が決まっている。それは50年、2047年までである。従って、現在の中華人民共和国の体制が継続する限り、47年の香港は、中国共産党一党独裁体制に完全に組み込まれることになる。「一国二制度」が終わりを告げ、北京政府による「一国一制度」が香港に及ぶ。

72年の共同声明の呪縛

 今、香港の人々は、中英合意のその先まで、自分たちの自由と民主主義を守り、拡充させるために戦っている。だから林鄭月娥行政長官が、逃亡犯引き渡し条例改正を公式に取り下げても、街頭での活動は終わらないのである。

 翻って、台湾について考えてみよう。1996年に李登輝政権下で実現した、総統から市町村議員まで、つまり中央から末端までの首長と議会を、自由で民主的な選挙で選出する体制は今や完全に定着した。3回の政権交代が平和裏に行われ、選挙戦は老若男女、全島を挙げての盛り上がりを見せる。その台湾を、共産党一党独裁の中華人民共和国体制による「一国二制度」の、一地方として組み入れたいと願う台湾人などいるはずがない。いるとすれば、一部の「台湾の中国人」だけである。

 台湾は世界一の親日国家である。人口2300万人の台湾から昨年1年間に日本を訪れた人は500万人を突破して、今も増え続けている。台湾には独自の政府があり、通貨があり、軍隊があり、アイデンティティーがある。自由で、民主主義で、法の支配を尊重し、平和を愛する隣人・台湾を、本来なら日本は国家として尊重すべきなのである。

 しかし、日本政府が72年の日中共同声明の呪縛(じゅばく)を逃れることは難しい。問題は第3項で「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重」すると謳ったことだ。しかも、79年の日中平和友好条約が、「共同声明に示された諸原則が厳格に遵守(じゅんしゅ)されるべきことを確認」した。だから日本政府は、台湾の取り扱いについて、中国政府から「中国の立場を理解し尊重」していないというクレームをつけられる事態を避けようと苦心している。それで、日本と台湾の間に法的基礎が全くないから、アメリカの「台湾関係法」のように、「日台交流基本法」を国内法で作ろうという呼び掛けに対して、政府も自民党も躊躇(ちゅうちょ)しているのである。

 それなら、まず国会が「台湾への武力使用反対決議」をしてはどうか。1年前、習近平主席が、「台湾同胞」に対して「外部勢力の干渉や台独(台湾独立)分子」に「武器の使用は放棄せず、あらゆる必要な措置を取る選択肢を残す」とわざわざ宣言した。現に統治下にない地域に対する武力行使の宣言は、台湾の人々に対する不当な圧力であり、中国共産党の独裁を外部にまで及ぼそうとする本性の発露である。日本は断じて、これを認めるべきではない。

 だから国会は、安倍政権に向けて「中国に対して台湾への武力使用を放棄するよう求めよ」と決議すべきである。

「内政干渉」に当たらず

 日中平和友好条約第1条第1項は、「内政に対する相互不干渉」を掲げているが、国会が「政府に、中国に対して台湾への武力使用の放棄を求める決議」をしても中国への「内政干渉」には当たらない。ましてこれは、日中共同声明にも、平和友好条約にも反しない、「平和主義国家」日本の国民の意思を示すものである。

 それでも中国が「内政干渉」反対といって騒いで、習近平主席を国賓として訪日させるわけにいかないというのであれば、来ていただかなければよいのである。

(あさの・かずお)

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