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日本人母子の権利を守れ

エルドリッヂ研究所代表、政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ

日米地位協定の改定を
人道上の責任ある両国政府

ロバート・D・エルドリッヂ

エルドリッヂ研究所代表、政治学博士
ロバート・D・エルドリッヂ

 1951年に締結された日米安全保障条約の改定版(「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」)が署名されてから、今月で60周年を迎える。

 新しい条約の付属資料の一つは、日米地位協定(「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」)だ。

 新しい安保条約では、改定せざるを得なかった旧安保条約のさまざまな問題をほとんど改善し、不安をかなり解消した。これに対して、日米行政協定の後身である地位協定は数多くの問題を残しており、特に日本国民の間で不満の対象になっている。

「男女間の問題」と一蹴

 さまざまな問題が指摘されているが、その指摘が誤解であったり、事実ではなかったりすることは若干ある。また、すぐ解決しなければならない問題を、95年の沖縄県少女暴行事件後、3回ほど「運用改善」で対処している。つまり、日米両国政府はこの60年間、地位協定の本格的な改定をしてこなかったことを意味している。

 どの地位協定も締結は難しい。改定のための再交渉も同様。両国の力関係をはじめ、主権、権利、国内制度と政治などを配慮して決めているからだ。それでも私は「仕事上」で、どうしても日本政府に責任を持って対米交渉して解決してほしい課題がある。

 それは米軍関係者(軍属、契約者、出張で来ている者ももちろん含む)が、沖縄県民をはじめ日本人女性、あるいは日本に合法的に暮らす外国人女性と付き合う中で、妊娠させた上、突然連絡を絶ち、帰国したり、急に居なくなったりするケースが非常に多いことだ。

 英語がうまく話せず、行き先を突き止めることができない上、在日米軍基地や米大使館・総領事館に協力を求めても相手にされない。残念ながら、基地問題を担当する防衛省の各地域の防衛局や外務省も同じように冷たい。その結果、泣き寝入りする日本人女性やシングルマザーが少なくないのが現実だ。

 筆者が4年前から無償で顧問をしている組織は、こうした女性を保護し、支援している。2007年に沖縄県内に拠点を設けたこの組織は、全国から相談を受けている。その中には、悲しく腹立たしく思える事案が多い。

 この団体が関わっても、ほとんどの場合、米軍基地や総領事館からの協力は一切なく、「個人の問題」「男女間の問題」などと言って片付けられてしまう。

 とんでもないことだ。少なくとも、誕生した子供の権利はある。しかも、国籍上、アメリカ人であるため、米政府の公的機関である大使館や総領事館は必然的に関心を持つ法的な義務がある。言うまでもなく、倫理的、人道上の責任は少なくともあるはずだ。

 残念ながら、上記のように日本政府の反応も鈍い。沖縄選出の与党の国会議員に相談しても、返事はなかった。

 もう一つの問題がある。それは、その父親である米軍の関係者が経済的な支援をしなければ、最終的に、日本政府の保護対象になる。つまり、日本の納税者が負担しなければならない状態になる。望まない形でシングルマザーになった母親は、なかなかいい仕事に就くことができず、貧困の連鎖が始まるか、あるいは既に始まっているのだ。

個人の問題でなく犯罪

 実際、昨年の春から夏にかけて、そのようなケースに直面した。しかも、女性は未成年であった。そこで筆者は、日米の壁があり、当事者が正しいことをしないのであれば、地位協定を変えるしかないと思うようになった。

 このような事件は、「個人の問題」で済ませられるものではなく、犯罪そのものだ。生活ができない子供や家族を放棄することになってしまっている。地位協定の他の法律違反で追及すべきである。

 なお、米政府は知らないふりはできない。そもそも、その米軍関係者は命令で日本に派遣されているため、米政府は必然的に関わっている。力がないシングルマザーが子供を守り育てながら、こうした負担を負わされてはならない。むしろ日米両国政府は、この非人道的な行動に政治の力で対処すべきだ。日本人の女性や子供の権利を守る追加条項を盛り込む改定を早急にするよう両国政府に強く求めたい。

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