«
»

「いずも」改修に思うPARTⅡ

元統幕議長 杉山 蕃

強襲揚陸艦の強化不可避
オスプレイ艦載運用が課題に

杉山 蕃

元統幕議長 杉山 蕃

 各省庁の次年度概算予算要求がまとまり、懸案のヘリ搭載護衛艦(DDH)の改修に、取りあえず甲板の耐熱性向上費として31億円が計上された旨報道された。結構なことと考えているが、最近その重要性が評価されている強襲揚陸艦について所見を4月に続き披露したい。

 強襲揚陸艦は一般に、着上陸する兵員輸送のヘリコプターを搭載、上陸用舟艇を内蔵する揚陸艦を言い、多くは垂直着陸できる戦闘機を搭載する。代表的な艦は、米海軍ワスプ級(4万トン計8隻)、アメリカ級(4・5万トン12隻計画、うち4隻進水)で、戦闘機、ヘリ、オスプレイ等状況に応じた取り合わせで40機程度の航空機を搭載、上陸部隊は約1800人、上陸戦用車両約100両と言われ、強力な戦闘力を有する。

ルーツは太平洋戦争に

 そのルーツとなるのは二つの流れがあり、いずれも太平洋戦争の所要を起点としている。一つは日本陸軍が開発した揚陸母艦と言える船体で、神州丸、あきつ丸、熊野丸(いずれも9000トン級)が該当する。これらは、胴体内に上陸用舟艇(大発)を収容、連続的に発進させるほか、隼戦闘機30機分の収納庫を有する。あきつ丸は現在と同様、全通式の飛行甲板を有し、指揮連絡機、オートジャイロ機の離発着が可能であった。

 二つ目の流れは、米国が戦時中、急遽(きゅうきょ)大量建造した「護衛空母」にある。これは大西洋方面で、輸送船団がドイツ潜水艦(Uボート)により大被害を受け、これに対処するため商船改造の護衛空母を大量に生産したことによる。当該空母は対潜戦が主目的で、艦隊行動する速度はなく、装甲、搭載武器は手を抜いたものであったが、対Uボート、補充用航空機輸送に活躍、航空優勢下では、偵察、観測、上陸部隊支援攻撃にも活用された(レイテ戦)。主流のカサブランカ級(1万トン)は1943年には年間50隻を生産、国力の差を見せ付け、各級護衛空母は終戦まで約100隻が生産された。

 これら強襲揚陸、船団護衛、上陸部隊支援といった流れは、その後の軍事技術の発達により大きく集約されていく。その最たるものは、回転翼技術の発達と、ハリアーに代表される垂直着陸機の開発である。ヘリは、戦闘員着上陸、地上掃討、輸送に手広く活用でき、戦闘力を一段と高めた。垂直/短距離離着陸(VSTOL)型の戦闘機は、ヘリの泣き所である低速の脆弱(ぜいじゃく)性をカバーするため、作戦地周辺の制圧に威力を発揮する。このような取り合わせから、現在の強襲揚陸艦が有力視されるに至ったものである。さらに最近、今回話題となったF35B(短距離離陸/垂直着陸=STOVL)の開発成功、V22オスプレイの実用化により、さらなる作戦能力向上が確実視される状況にある。

 我が国周辺の情勢を見る。中国は人民解放軍の作戦目標の第一は当然台湾への上陸作戦にあり、各種の上陸・揚陸艦を保有しているが、特に注目しなければならないのは071型強襲揚陸艦(ヘリ搭載2・5万トン9隻保有)に引き続き075型の建造を開始したことである。当該艦は全通式甲板、4万トンに達する大型艦で、30機の各種ヘリを搭載する。もちろん将来VSTOL機の開発運用を見越したものであるらしい。韓国は北朝鮮をにらんで揚陸艦の必要性は高い。大型艦としては独島級(1・9万トン)を建造保有しているが、搭載ヘリの防錆技術等の問題で戦力化が遅れた。

対潜能力の維持は必須

 我が国のヘリ搭載護衛艦は、4隻で改修が決まった「いずも」型(約2万トン)2隻、と「ひゅうが」型(約1・4万トン)2隻である。いずれも対潜戦を主眼として開発され、ルーツの流れからは「護衛空母」的である。今回F35搭載改修が決まり、制空能力に大きな力を持つことになる。さらに次の課題も抱えている。陸上自衛隊に配備が始まったV22オスプレイの艦載運用である。米海兵隊では既にオスプレイの揚陸艦運用が定着しているが、陸自の戦力化も離島防衛をにらみ、急がねばならない。こうして見ると我が国周辺を含めて、強襲揚陸艦の強化は避けられない趨勢(すうせい)にあり、我が国としても本腰を入れた検討が必要である。

 このような多様な運用要求が課せられたDDHであるが、本来の対潜戦能力が手薄になることは絶対避けなければならないことから、航空機搭載護衛艦について、統合的見地から、その充実策を検討すべき時期に来ていると考える次第である。

(すぎやま・しげる)

1

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。