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「ナラティブないのち」とは

加藤 隆

人間は「物語」を紡ぐ存在 「情報」は代役にはなり得ず

名寄市立大学教授 加藤 隆

 以前、大阪のホスピス病棟で得難い経験をしたことがあった。余命がわずかとなった中年の男性が、20年音信不通にしていた弟の連絡先を見つけ出し、病室に呼んで長年不義理であったことを涙ながらに詫(わ)びて和解を果たしたのである。この光景を見ながら、人間は身体の苦痛を和らげるための医療的処置だけで満足する存在ではなく、より本質的には、心の平安に生きていることをまざまざと思い知った。このことは、『死ぬときに後悔すること25』という、数千人の最期を看取ってきた医師の著書でも触れられている。死期が近づくにつれて後悔として強く残ることは、人格や人間関係に関わる事柄であるという。そして、最も多かった後悔は、愛する人に「ありがとう」を伝えなかったことであった。

健康や寿命に偏り過ぎ


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