«
»

日本は「一帯一路」拒否明言

拓殖大学国際日本文化研究所教授 ペマ・ギャルポ

曖昧な姿勢利用する中国
習政権の延命を間接的に助勢

ペマ・ギャルポ

拓殖大学国際日本文化研究所教授
ペマ・ギャルポ

 読者の皆様がこの新聞を目にする頃、時代は平成から令和に変わっているだろう。チベット語の発音ではレワという言葉に近く、その希望という意味から、新時代は日本にとって、そして世界にとって希望に満ちた平和で輝かしい時代になることを祈願している。だが一方、希望より不安の時代になる要素も見え隠れする。その一つの要因は言うまでもなく中国の覇権主義的領土拡張の野望である。4月25日から27日まで北京で2回目の中国の「一帯一路」に関する国際会議が開かれ、37カ国の首脳が参加したと中国側は発表した。この参加者の中にはイタリアのコンテ首相やマレーシアのマハティール首相までもが名を連ねている。中国政府は2017年の1回目の会議に出席した首脳の数が29カ国であったのに対し、今回37カ国に増えたことは中国の一帯一路の政策を理解し、共鳴する国が増えたしるしであると自慢げに報道している。

本質隠し低姿勢路線に

 今回も中国の一帯一路の本質を熟知するインドとアメリカは欠席で、アメリカの場合、同盟国に対しても慎重に振る舞うよう促した。日本は政府首脳が参加してはいないが、自民党の二階幹事長が安倍首相の特使のような形で同会議に参加し、習近平氏の日本訪問に関しても安倍首相に代わって要請したと聞く。イタリアやマレーシア、遠くはペルーまでもが雪崩のように一帯一路計画に参加していることには二つの理由があるとされる。一つは中国自身がカムフラージュとしてこの路線の性格をあくまでも関係者相互の経済的発展のためであり、政治的戦略が無いように装って一帯一路の本質を隠し、低姿勢な路線に変えたところにある。

 第2に今年の全国人民代表大会以来、中国は日本がこの計画に参加するかのような報道を繰り返し、日本がぶれて発信している曖昧な姿勢を中国が逆手に取って利用しているところにある。安倍首相は中国の一帯一路構想に対し透明性など四つの条件を出しているため、安倍首相を支持したい評論家などは、これらの条件を中国がのむはずも、のめるはずもないので、事実上は一帯一路への参加を拒否している姿勢には変化がないと言っているが、中国は自分に都合よく解釈し最大限に利用している。

 かつて天安門事件後に日本が世界の先進国に先駆けて経済制裁を破って中国にいち早く協力したため、他の先進国も日本が中国のマーケットを独占する可能性を恐れてドミノ現象を起こした。日本は当時の共産党政権を助けることで中国の民主化の道をふさいだ。中国の世界覇権を達成するための重要な手段の一つである今回の一帯一路を助けることは、習近平独裁政権の延命と、中国の世界制覇を間接的に助勢することになる。日本が大きな影響を持つアジア開発銀行の中尾武彦総裁による「継続的に中国へ融資する」という発言を見ても、日本が揺らぎ始めたことを示唆している。これは世界銀行とは反対の路線である。

 世界銀行の歴代総裁はアメリカ大統領が指名している。つまりアメリカの外交戦略上の一つの媒体である。現在、日本のイニシアチブでアメリカが最も力を入れている外交政策は自由で開かれたインド太平洋構想。これはまさに中国の一帯一路による経済侵略を阻止し、自由社会を守り、民主国家の結束を固めるという意味での中国への牽制(けんせい)である。中国の王毅外相の「自由で開かれたインド太平洋構想が水の泡のように消えるだろう」という予言通りにならないためにも、日本が毅然(きぜん)たる態度を取ることが重要である。

「令和」を希望の時代に

 従って新しい令和の時代が平和で自由と民主主義が世界を主導していくか、中国共産主義独裁の主導の下に国々が吸収され、中国が世界の覇権を握るかの分かれ道になるだろう。中国の低姿勢や目先の利益に惑わされないことが、新しい天皇の下、新しい元号「令和」がチベット語で「希望」を意味する言葉通り末永く続き、日本の平和と発展にとどまらず、アジアさらに世界に平和と自由をもたらす新時代を実現する道である。

5

コメント

コメントの書き込み・表示するにはログインが必要です(承認制)。