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災害時の避難先の違い理解を

濱口 和久拓殖大学大学院特任教授 濱口 和久

逃げる場所と落ち着く先
事前に帰宅困難時の対策も

 避難場所と避難所の違いを正しく言える人はどれくらいいるだろうか。

 避難場所と避難所については、災害対策基本法が平成25(2013)年6月に改正されたのに合わせて、明確に定義されるようになった。

 避難場所とは、災害時の危険を回避するために一時的に避難する場所のことで、緊急避難場所ということもある。避難場所には、延焼火災などから一時的に身を守るために避難する場所や、帰宅困難者が公共交通機関が復旧するまで待機する場所として、地域の小さな公園や、小学校の運動場などが指定されている一時避難場所と、地震などによる火災が延焼拡大して地域全体が危険になったときに避難する場所として、大規模公園や団地・大学などが指定されている広域避難場所がある。

 一般的に屋外の建築物がないスペースが指定されていることが多いが、洪水、津波、高潮など、災害の種類によっては指定が異なる場合があるので、普段からハザードマップなどで確認しておく必要がある。

 避難所とは、災害によって避難生活を余儀なくされた場合に、一定期間の避難生活を行う施設で、収容避難場所ということもある。避難所は、災害で住居を失った人などが一時的に生活する場所になるため、公民館や小・中学校等の体育館などの屋内施設が指定され、地域防災の備えとして、非常食や衣料品、燃料などさまざまな物資や消耗品が保管・備蓄されている「防災倉庫」が併設されていることが多い。

 津波避難のとき、緊急避難場所は浸水が及ばない高台に位置しているが、避難所は浸水地域外とは限らないので注意が必要だ。

 福祉避難所は、介護の必要な高齢者や障害者、妊婦や乳幼児、外国人などの災害時要援護者(要配慮者)が避難生活をするための特別な配慮がなされた施設である。2次避難所であるため、小学校などの一般の避難所にいったん避難した後に、必要と判断された場合に開設される。開設期間は原則として災害発生の日から最大限7日間で、延長は必要最小限の範囲にとどめることになっている。運営に当たる人材は、多くを地域内のボランティアによって確保しなければならない。福祉避難所は、地域や生活圏のコミュニティーを重視した身近な施設と、専門性の高いサービスが提供される施設に大別される。

 福祉避難所として指定されるのは、施設自体の安全性(耐震、耐火など)が確保されているとともに、手すりやスロープなどのバリアフリー化が図られ、災害時要援護者の安全性が確保された施設が指定される。

 帰宅困難者問題についても触れておきたい。

 帰宅困難者とは、自宅以外の場所で地震などの自然災害に遭遇し、自宅への帰還が困難になった者。特に首都直下地震や東海地震が起きた場合に、大量の帰宅困難者が出現することが懸念されている。

 災害により交通機関が途絶する事態が生じた場合、自宅があまりにも遠距離に在るということで帰宅を諦めた「帰宅断念者」と、長距離ではあるが何とか帰れると判断して徒歩で帰宅しようとする「遠距離徒歩帰宅者」の両者を併せて、帰宅困難者と呼ぶ。

 東日本大震災では、鉄道が運行を停止するとともに、道路も大規模な渋滞が起き、バスやタクシーなどの交通機関の運行にも支障を来した。その結果、鉄道などを使って通勤・通学している人が帰宅できなくなり、首都圏では約515万人(内閣府推計)に及ぶ帰宅困難者となった。外出者の約28%が当日中に帰宅できなかったことになる。また、災害現場に向かう救急車やパトカーなどの緊急車両の通行が妨げられる問題が多発した。

 内閣府中央防災会議では、統計上のおおまかな定義として、帰宅距離が10キロ以内の場合は全員「帰宅可能」、10キロを超えると「帰宅困難者」が現れる。20キロまで1キロごとに10%ずつ増加し、20キロ以上は全員が「帰宅困難」としている。

 民間団体「帰宅難民の会」によると、男性の革靴で15キロ歩くとマメだらけになり、女性のハイヒールは4キロが限界としている。普段から職場などに履き慣れたスニーカーなどを備えておくことも必要である。

 無理に帰宅しようとすると、危険な状態に巻き込まれる恐れもあり、企業や学校が安全な場合には、むやみに移動せず、その場で待機する。どうしても帰宅する必要がある場合の安全対策は次の5点だ。

 ①歩き出す前に正しい情報を得る②普段から自分がどの程度歩けるかを知っておく③帰宅ルートを決める場合は、できるだけ安全と思われる道路を選ぶ(幅員の広い幹線道路)④倒壊しそうな建物、ブロック塀、落下物、電柱・電線に注意しながら歩く⑤公共施設以外のコンビニエンスストアやガソリンスタンドなどの帰宅支援ステーションを活用する。

 災害大国・日本で暮らす私たちは、災害から逃れることはできない。まずは自分の生命(いのち)を守るための避難先(避難場所や避難所)の知識や、外出中に災害に遭った場合のシミュレーションをしておくべきである。

(はまぐち・かずひさ)

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