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国旗への異なる関心 日本の子供の方が幸せだ

元嘉悦大学教授<br>山田 寛

元嘉悦大学教授 山田 寛

 「セントビンセント・グレナディーンの国旗について質問します」。国旗専門家で東京五輪組織委員会国際局アドバイザーを務める吹浦忠正さんは、4年前から東京・江東区の小中学校で出前授業を開いてきたが、こんな質問を受けて舌をまいた。カリブ海の超ミニ国家にまで関心を持っている!

 財団法人「国際知識普及協会」(稲川素子理事長)が、国旗検定試験というのを実施している。10年前、幼稚園で「国旗ビンゴ」を行ったのが最初で、当時は5~20人が集まる程度だったが、近年は東京五輪効果もあり受験者がどんどん増えた。コロナ禍の中でも、今年3月、6月に全国で実施した検定試験には、小中学生など1回500~700人が受験している。

 子供たちの国旗への関心と理解が増している。通販でも書店でも、絵本、図鑑、パズル、マスクなど子供向け国旗グッズがいっぱいだ。

 日の丸の旗は私が子供だった1950年代には、祝日にかなりの家が立てていたが、やがて右翼の街宣車の専売特許になった。学校では左翼の教員が、国旗・国歌に敬意を表さないよう教えていた。だが今、国旗への関心の主役は右翼から子供たちへ移った様だ。

 まず国旗の豊かな色彩やデザインにひかれ、世界を覗(のぞ)き、世界に前向きの夢と関心を抱いて行く。そんな子供が増えているなら、健全で幸いなことだ。

 世界には幸いでない子供たちもいる。

 外国国旗を踏んだり、焼いたりする映像が時々海外から届く。パレスチナ・ガザ地区を支配する武装勢力ハマスが、子供たちにイスラエルと米国の国旗の絵を踏みつけながら行進させている映像を、初めて見た時はショックだった。武力紛争中心地でも、これでは子供たちの国旗体験は憎悪でしかないだろう。

 もう一つショックだったのは、十数年前、韓国の国会議員団が日本国旗を踏みつけていた写真。国会議員団がこれでは、子供たちも見習って当然だ。

 国旗ではないが、東京五輪を前に、韓国は日本の旭日旗(「戦犯旗」)排除を訴え続けてきた。国際五輪委(IOC)に、会場への持ち込みを禁止するよう求め、パラ五輪メダルの図案が旭日旗を連想させると抗議もした。

 先月、ソウルの日本大使館前は、民間団体が旭日旗に火をつけ、コチュジャン(辛子味噌〈みそ〉)を塗りたくる騒ぎとなった。竹島(独島)ではテコンドー少年団が、旭日旗が描かれた板を飛び蹴りで粉砕して見せた。

 近年、韓国人の旭日旗糾弾は一段と過熱し、似た模様を見ると、風車に突進するドン・キホーテとなる。欧米で、アジアで、ステンドグラスや壁画やタレントのタトゥーまで糾弾した。反発したフィリピン人側と、国旗を侮辱し合うネット動画合戦まで展開した。

 東京五輪がほぼ無観客開催となり、関係者は「無観客は残念だが旗のトラブルの心配は減った」と少しホッとしている様だ。世界中で紛争や弾圧、対立が続き、有観客ならどんな旗が振られ、国旗侮辱が起きるかわからなかった。

 五輪はひとまずOKとして、子供たちのことが気になる。イスラエルと米国の国旗を踏む子供たちも、旭日旗を蹴る少年たちも、旗を通して育まれるのは全く後ろ向きの関心だろう。外国の旗を侮辱して国内的効果はあっても、国際的には理解も支持も尊敬も得られまい。そんな行動を教え込まれて幸せだろうか。

 こう言うと韓国から猛反発され、紛争国から「極楽平和トンボの日本は甘い」と言われそうだ。だが韓国、中国、どの国の子供にも、国旗を通して世界に前向きに、幸せに溶け込んで行ってほしいと思うのである。

(元嘉悦大学教授)

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