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コロナ禍の世界で増える 子供の誘拐・売買・行方不明

山田寛の国際レーダー

元嘉悦大学教授<br>山田 寛

元嘉悦大学教授 山田 寛

 世界各地で近年、子供の拉致・誘拐・人身売買・行方不明が増えてきた。コロナ禍の中、一層増加しているようである。

 その摘発や被害者救出が難しいことは、先月初め中国公安部が発表した数字でも示されている。年初から国中で被害者を探し出す「再会作戦」を展開し、4月末までに約700人を見つけ、犯罪容疑者86人を逮捕した。中国メディアは、30年ぶりの親子再会の感動物語などをせっせと報じた。

 しかし、年間7万~20万人もの子供が拉致・誘拐などで行方不明になっているという子供拉致大国。泣く子も黙る中国公安が全国作戦を展開しても、成果はごくごく一部なのだ。

 世界でこれらの犯罪の被害者がどれ程いるか。大雑把な推計によるしかないが、大人と子供の合計の人身売買を見ても、米国務省の推計で2006年は400万人だったのが、近年の同省報告では2500万人に達している。

 国連薬物犯罪事務所(UNODC)は今年2月、18年に発見された売買被害者は約5万人、うち34%が子供だと公表した。子供の比率は03年と比べ3倍に増えた。発見総数も16年から倍増しているが、発見率はやはり数百分の一に過ぎない。

 売買被害少女の多くは性産業・性搾取へ、少年は強制労働へ…だが、売買の間口も広がっている。昨年の米国務省報告が注目していたのが、スポーツ選手になりたい子供をねらう売買。欧州のサッカー関連産業だけで、年1万5000人の被害者が出ているという。

 そして国連機関もNGOも強く懸念しているのが、コロナ禍の負の影響だ。この種の犯罪の追い風ともなっている。「人身売買や誘拐の犯罪者は、コロナ禍の混乱を利用している」「数百万人が売買や性的搾取の危険にさらされている」というのである。

 学校閉鎖、都市閉鎖で、子供たちはSNSにふける。犯罪(業)者には、SNSは彼らを誘惑する最大の武器となる。仮想通貨の普及も便利だ。

 家計が困窮し、学校閉鎖を機に退学する子供も多い。教員やNGOは子供との接触が困難になり、犯罪者にとって邪魔者も減っている。

 欧州のNGO連合「欧州の行方不明児たち」のホットラインには、昨年8857件の新規行方不明(前年比17%増)が報告された。欧州では、毎年20万人以上の子供が行方不明(犯罪と無関係の家出も含む)になっているというが、昨年は一層増加したようだ。

 毎年40万人前後の行方不明児が連邦捜査局(FBI)のリストに加えられる米国で、昨年NGO「行方不明・被搾取児のための全国センター」に寄せられた報告件数は、行方不明児は前年比8・3%増、被搾取児は28%増。「ネットでの誘惑」は3万7872件で97・5%も増加した。

 インドでは、昨年4月~9月に1127人の子供が売買から救出されたが、今や感染大爆発で親を失う子供が激増し、SNSには彼らを狙う違法な養子募集などがあふれている。

 メキシコでは昨年11月、NGOが「8000人の子供が犯罪組織のため行方不明だ」と訴えた。今年4月、国連機関が「毎日275人もの子供たちが米国行きを目指し、中米諸国から集まっている。年初の9倍。半数は単独行だ」と明らかにした。暴力と貧困を逃れて来るが、移動・待機中にさらに誘拐、売買、性的虐待などの標的になっている。

 アフリカは戦乱、テロ、子供労働があふれ、被害状況把握は一層困難だ。国際赤十字は昨年8月、「大海の一滴」と認めながら行方不明児2万人と報告した。

 世界中で警報が鳴っている。コロナ禍の中のもう一つの重大な人災である。

(元嘉悦大学教授)

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