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北京五輪ボイコットと日本、08年の喝采繰り返すな

yamada

 

 16日の日米首脳会談。北京冬季五輪ボイコット問題では何か話し合われるだろうか。バイデン政権は同盟国や友好国とこの問題を協議する意向を示し、中国側はハリネズミの様に針を立てて、その動きを警戒している。今後ギリギリの五輪外交戦が展開される可能性もある。

 2月初め、180の人権・社会団体が各国政府にボイコット要請書簡を送ると、中国はすぐ国営「環球時報」が威嚇社説を載せた。「具体行動をとる国があれば、中国は激烈に報復するだろう」。だがその後米上下両院議員らが決議案を提出し、英、カナダ、欧州連合(EU)などの議会でもボイコットなどを求める声が拡大した。メディアの議論も盛んになった。

 先週の日中外相電話会談で、中国の王毅外相は「東京五輪と北京五輪の開催を互いに支持したい」とわざわざ言及した。高圧的ハリネズミの警告だろう。

 ボイコットのハードルは高い。国際五輪委(IOC)、各国五輪委はまず反対で、バッハIOC会長は「歴史を見てもボイコットはアスリートを犠牲にするだけ。目的は何も達成しない」と強調した。

 実際、第2次大戦後、パラ五輪も含め80年のモスクワなど7大会で、様々なボイコットが行われたが、それで問題が解決された例はない。今回も99%ないだろう。

 だが中長期的に将来を考えたら、ボイコットの影響は軽視できまい。強権国家の威信が傷つく影響はじわり広がる。弾圧に耐えている人々の希望もつながる。

 そして五輪と世界の歴史に刻まれる。将来世代がその歴史を読み取り、何十年か先の中国民主化につながるかもしれない。逆に北京で拍手喝采に唱和したら、中国の覇権主義的自信を一層膨張させるだろう。

 とにかく今ボイコット協議は中国が最も嫌がるカード。だから真剣に協議に取り組むべきである。

 日本には特にハードルは高いだろう。だが少なくとも「最初からボイコット反対ありき」ではダメだ。対中国、人権問題で、日本は今のところ、全くの“言うだけ番長”でしかない。

 08年北京夏季五輪を思い出す。この時もボイコット論がかなり出たが、世界の五輪界では「この五輪で中国の人権問題は前進する」との夢物語がなお語られ、結局ボイコットはなかった。だが特に米仏などではボイコット論が強く、フランスの学者、文化人、言論人らは「北京08五輪ボイコット集団」を結成、反対運動を猛展開し、仏大統領選の一論点ともなった。後に同集団の主張を仏メディアで読み、強く印象づけられたことがある。

 中国の問題行動先として、日本(対日外交戦の仕掛け)が、台湾、チベット、ウイグル、スーダン(虐殺容認政権への支援)と並べられていた。

 中国では05年に歴史問題で激しい反日デモ・暴動が続いた。政権は反日蛇口を開けたり閉めたり。それを、遠い国からこんなに強く糾弾してくれていたのである。

 ところが日本では、06年末訪中した河野洋平衆院議長が胡錦濤国家主席に依頼され、「北京五輪を支援する議員の会」(225人が参加)を結成した。米議員100人以上が同じころ、中国にスーダン支援非難書簡を送ったのと全く対照的だった。五輪開会式には福田康夫首相が出席した。

 外国は糾弾し、当の日本はノホホンと中国の要望に沿う。89年の天安門事件後の日本の中国応援外交に続き、この大甘五輪支援の様な積み重ねが、今日のモンスター中国出現を手助けしたのではないか。

 今回そんな繰り返しだけは絶対ノーだ。尖閣情勢も急を告げている。最小限、北京五輪開催を応援すべきではない。

(元嘉悦大学教授)

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