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国土だけでなく人の心も汚染
-作家・日本大学教授 楊逸氏

中国共産党100年

―識者はこう見る

作家・日本大学教授 楊逸氏 (上)

 私の家は母方が地主の出身で、搾取階級ということで政治運動が起こるたびに必ず迫害される側にいた。母が小さい頃、土地も家も全財産を奪われ、父親は息子たちを連れて台湾に逃げた。12、13歳ごろの母は食べ物を恵んでもらう乞食のような生活を送った。父は中農階級の出身で、母と結婚してハルビンに移り住んだが、どこも共産党の天下でやはり迫害される運命にあった。

作家・日本大学教授 楊逸氏

 ヤン・イー 1964年、中国ハルビン生まれ。87年、留学生として来日。お茶の水女子大卒。2008年、『時が滲む朝』(文藝春秋)で、日本語を母国語としない作家として初めて芥川賞受賞。小説作品以外にも『わが敵「習近平」』(飛鳥新社)などの著書がある。

 私の記憶に残っているのは、下放。11歳上の一番上の姉が16歳の時に学生下放して、ロシアとの国境地帯の高地に行った。私が5歳の頃、私たち一家は別の農村に下放させられ、何年も人が住んでいない廃屋に住まわされた。窓もドアも枠だけ。真冬の中国の東北の風は日本では想像もできない。そこで3年半暮らしたが、よく生きてこられたと思う。

 私が小学2年生の頃にハルビンに戻れた。とはいえ2年くらい高校の教室に住まわされ、食事も作れずとても辛(つら)い日々だった。一番上の姉は下放先で事故死。今考えると、私が日本に来るまで、わが家は穏やかに暮らすということがなかった。

 うちは下放したが、一方で地方の貧農の人たちは、都市に移されて学校や病院を占領して出世していった革命派、工農兵というような人もいた。時代的な違いもあるとは思うが、日本にいる中国人の知人たちと話し、下放を経験した人はごく少数だと分かった時は、かなりショックだった。階級によって人間の扱い方が全然違うのだ。

 習近平主席は共産党創設100年の集会で「貧困問題を解決した」と自画自賛した。しかし、李克強首相は昨年の全人代で、中国では月収1000元(約1万5000円)の人が6億人もいることを明かした。「貧困問題の解決」など真っ赤な嘘(うそ)だ。

 それ以上に問題なのは、中国国内どこを見ても人間が住める環境でなくなったことだ。河川や土地が汚染され飲める水がない。北京では前が見えなくなるほどPM2・5で空気が汚染され、その浄化には何百年もかかると専門家が指摘している。

 さらには人間の心も汚染された。中国ではお金がないと生きていけない。賄賂を支払わないと出産の病床も用意してもらえない。幼稚園もお金を払わないといいところに入れないし、受験の時にも、すべて賄賂がいる。お金がないと生きられないし死ねない、そんな社会になっている。

 習近平政権は、表面的には反腐敗を掲げているが、実際は権力闘争だ。みんな腐敗している。その腐敗文化を日本、米国、全世界に輸出している。

 「一帯一路」がそのルートだ。お金と脅しで言うことを聞かせている。今屈しているのはアフリカ、南米、ギリシャやイタリアなどだが、屈すればいずれ消えてしまう。ベネズエラなどはそのモデルだ。

 共産党は人民のための党というが、そうではない。中国共産党100年を特集した、日本のテレビ番組では、中国人は若者を含め、共産党支配の現状を肯定しているという報道をしていた。これは、中国人がしっかりと奴隷的な環境に飼いならされているということだ。

 実は当局は、中国に入って現地取材する海外メディアに対して、取材地、取材対象者、あるいは「編集済みの記事や番組」についても、厳しい制約を課した上、細かに審査しているのだ。「偉大なる中国のイメージ」に合わないような「不都合な」人も景色も初めから撮らせないようにしているのだから、いくら日本のメディアとはいえ、「中国の真実」なんて伝えられないと考えて、ほぼ間違いないだろう。(談)

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