ワシントン・タイムズ・ジャパン
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テレワークの未来

充実度高い「ワーケーション」

株式会社ニット代表取締役 秋沢 崇夫氏に聞く

 新型コロナウイルスの拡大により、テレワークという働き方が注目されるようになった。実際に体験したという人も多く、コロナ収束後の社会にも大きな影響を与える可能性は高い。

 テレワークの未来と注目すべきポイントについて、2020年に総務省「テレワーク先駆者百選」に認定され、国内外400人のリモートワーカーを抱える株式会社ニットの代表取締役・秋沢崇夫さんに話を聞いた。(聞き手=石井孝秀)

働く場所は自由自在
管理から自立促す経営へ

会社を立ち上げた経緯は。

株式会社ニット代表取締役 秋沢 崇夫氏

 あきさわ・たかお 1981年東京都生まれ。青山学院大学卒業後、2004年株式会社ガイアックスに入社。起業のため32歳で退職、起業の軸を探すために、東南アジアやアメリカを放浪する旅に出る。17年8月株式会社ニットを設立。バックオフィス系の業務をオンラインで請け負うサービス「HELP YOU」や社員の働き方を発信するメディア「くらしと仕事」など提供。

 学生時代から起業してみたいという思いがあったが、起業のヒントを探すため前職を退職し、海外を旅する期間があった。その時、米国で各地を転々と旅しながら、フリーランスとしてパソコン一つを抱え、仕事をこなした。この体験が創業のヒントにつながった。

 考えてみると、一日に8時間働くということは、24時間のうち3分の1が仕事、人生の約30%が働く時間に費やされている。その仕事が楽しいのか嫌々やっているのかで、人生が大きく変わってしまう。

 例えば、仕事先に迷惑を掛けるから、長期の海外旅行には行きづらい。しかし、テレワークが普及すれば、休暇を取りつつ仕事をする「ワーケーション」が可能になる。そのような時代になった方が、人生は確実に充実する。そのような世界を実現したいと思った。

 具体的に注目したのは、今までオンライン上で扱われてこなかった事務作業などの業務だ。これらをオンラインで代行するといったマーケットはこれから伸びていくだろうと思い、いろいろと試してみた。

その過程で特に目を付けたのは。

 女性の仕事がいかにライフステージに左右されているか気づかされた。つまり、結婚や出産、介護、夫の転勤など、自分がコントロールできない部分でキャリアに影響が出てしまう。なので、オンラインを介して優秀な女性たちの能力を社会に反映させ、困っている企業とマッチングさせたら、そこにビジネスが生まれるのではないかと考えた。

 女性だけでなく男性の中にも、働き方を見直したとき、今の働き方でいいのかと考える人が多く、コロナ禍の影響でそのような人は増えている。テレワークが広がったことで、自分のやりたいことをベースに置いた働き方をしたいという男性社員も増えてきた。

 また、雇用をオンラインとつなぐことは、地方に住みながらやりたい仕事ができたり、東京からUターンして地元に戻れるパス代わりにもなる。地方創生などの社会問題解決にも期待できる。

現在のテレワークの状況をどう評価しているか。

 多くの人がテレワークを体験し、その便利さを体験するようになった。働き方が今後、コロナ前の状態に戻ることはないと思う。オフィスを縮小移転したり、なくしている企業も出てきているほどだ。一方で、仕事をする場所を自分で選択できるということは、誰とも話さない日が増えたり、孤独を強く感じるケースもたくさん出てくるようになるだろう。

 そうなると、会社のオフィスの使い方・在り方も変化してくる。例えば、フルリモート可能なわが社がオフィスを構えているのは、人と人とがつながるための場所として、また社員の戻る場所としてオフィスが必要だと思ったからだ。

 会議も相談事も相手と直接会って聞いた方が話を引き出しやすいし、仕事仲間と雑談したい時もある。目的に合わせて、働く場所を自由に使い分けるという働き方が、今後の働き方のスタンダードになっていくのではないか。

ニットではオンラインの飲み会や入社式も実施しているが、これも孤独感対策か。

 オンラインで新しい会社に入るのは、自分の立場だったらものすごく不安。だから、オンライン上で歓迎ムードをどう演出するかという工夫には力を入れている。

 私がテレワークで心配しているのは、働き過ぎてしまうことだ。これまでは通勤・勤務の時間がはっきり分かれていたが、テレワークだとそれがなくなる。頑張り過ぎて、自分も周りも気が付かないうちに、いつの間にか「うつ」になってしまう。これを「サイレントうつ」と呼んでいる。だからこそ発散する場所が必要ということで、お楽しみの時間は重視している。

今後、社会的にテレワークが広まっていくには、何が必要か。

 二つの視点がある。一つは働き手側。自分が仕事や人生で、どういうことをやっていきたいのかを明確にすべきだ。テレワークだと誰に言われるでもなく、自分が主体になって働かなければならない。

 これから自分がどんなキャリアをつくっていきたいのか、どういう生き方をしたいのかをよく考えて決めていくべきだ。自分のライフプランを明確にすることが大切になる。

 もう一つは会社側の話だ。テレワークの時代は業務する姿が見えない時代。トップによる管理体制から、自立を促す経営スタイルへと変更していくなど、考え方をアップデートしていかなければいけない。

 管理しなければという考え方は、さぼり対策など性悪説に基づく。テレワークだと基本的には本人に任せた上で、性善説に基づき管理・経営をしていくという考え方への変化がなければ、普及は難しいだろう。

 管理から自立型へと促すためには、まずは社員がどんなことをやりたいのか、それを会社側が把握する必要がある。個人のライフプランと会社のあるべきミッション、この二つの円が重なり合う面積が大きいほど、本人のやる気や自律性は促せるはずだ。会社と社員の関係の再構築がとても重要になってくる。

テレワークと聞くと方法論・機能論のように感じるが、大事なのはやはり「人」か。

 その通りだ。在宅ワークとは、あくまでやり方。大事なのは「HOW」ではなく「WHY」。仕事の目的が、何となく働いてお金を稼ぐだけだったり、受け身体質だと厳しい。「なぜそうするか」という目的に立ち返り、まずは私という人間とじっくり対話するべきだ。

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