ワシントン・タイムズ・ジャパン
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使い捨てプラ、次世代に残さない

環境ジャーナリスト 竹田 有里さんに聞く

 私たちの身の回りに溢(あふ)れる、使い捨てのプラスチック製品。廃棄されて一度海に流れると長く留まり、レジ袋一枚が自然分解するのに1000年かかるという研究もある。海洋ごみの削減が世界的な喫緊の課題となる中、2019年のG20大阪サミットでは、プラスチック製ストローに代わり世界初の「木のストロー」が使われ、話題となった。発案者である環境ジャーナリストの竹田有里さんに、環境への思いと日頃の取り組みを聞いた。
(聞き手=辻本奈緒子)

「木のストロー」で啓発
間伐材利用と障害者雇用も

環境問題に関心を持ったのはいつ頃か。

環境ジャーナリスト 竹田 有里さん

 たけだ・ゆり 1987年岡山県生まれ。上智大学地球環境学研究科修了。TOKYO MXでキャスター、報道記者等を歴任。フジテレビの環境ドキュメンタリー番組「環境クライシス」企画制作・出演。文化放送「斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!」サブキャスター(産休で降板)・報道記者。海洋政策研究所「海洋白書」編集委員。その他、雑誌・ウェブページで執筆。横浜市SDGsデザインセンターのコーディネーターに就任し、日本初の海中教室や、企業・教育機関・自治体の架け橋として環境に特化したプロジェクトを実施。

 東京都のローカルテレビ局・TOKYO MXに入社して1年目の時、東日本大震災が起こり、取材をするうち、自然災害に興味を持った。毎年のように「未曽有の」と言われる大災害が起こる中で、防災や減災の情報を視聴者に届けたいと思い、入社2年目で「検証!首都防災」という番組を立ち上げた。専門家に取材しながら、豪雨などの災害は気候変動の影響を受けていることを知った。しかし知識が中途半端で、取材相手の有識者にも「もう一度勉強してから来い」などと言われたこともあり、環境問題を本格的に勉強するため、上智大学大学院で地球環境学を学んだ。

記者の経験が生きたことは。

 社員の少ない会社だったので一人であらゆる仕事をこなしていて、結果的に分野を問わずいろんな人とつながることができた。人脈があってこそ、「木のストロー」も実現できたと思う。どんな人にも会って話を聞くチャンスがあるのが、この仕事の魅力だ。

木のストローを作るのに苦労したことは。

 木のストローは杉の間伐材を使い、薄くスライスしたものを手作業で巻いて作る。難しいのは機械化だ。木は生きていて反発力があるので、巻いても跳ね返ってしまう。機械化ができれば大量生産ができるが、今は一本ずつ手で作っている。

 当初は木材の調達先もなかなか見つからず、北海道の仕入れ先を見つけたものの、輸送の過程で二酸化炭素が排出される(カーボンフットプリント)。地産地消を目指したいと思っていたところ、横浜市からお声掛けを頂き、「横浜モデル」を構築した。横浜モデルでは、同市の水源地である山梨県道志村の間伐材を使って、市内の障害者施設でストローを製作、市内のホテルやイベント会場で利用されている。

障害者雇用にもつながっている。

 きっかけは、2016年に相模原市で起こった津久井やまゆり園の事件を取材したことだった。障害の有無にかかわらず一緒に社会をつくっていくことを、木のストローを通じて実現したいと思った。記者時代に取材した障害者の方が「正社員になるのが夢だ」と語っていたのが今も印象に残っている。木のストローは1本50円とコストは高いが、作業する障害者の人々に十分な時給で働いてもらうためにも、価格が下げられずにいる。その価値を理解してもらえる企業に、木のストローを導入してもらっている。障害者施設だけでなく、シルバー人材で作業しているところもある。

木のストローはどこで使えるか。

木のストロー

木のストロー

 ザ・キャピトルホテル東急や横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ、JR東日本のグランクラスで利用できるほか、インターネットでも購入できる。基本的にはストローを出さず、注文時に頼んだ人にだけ提供している。製作キットを授業で使っている小中高校もある。

木のストローを通じて伝えたいことは。

 発案のきっかけは、2018年夏の西日本豪雨だった。取材に入り、地元・岡山の大変な状況を目の当たりにした。土砂災害を「人災だ」と話す地元の人の言葉で、間伐しきれていない場所が残ったことが原因の一つだと知った。記者は批判することが多い仕事だが、社会に対して何か提案してもいいのではと思い、考えたのが木のストローだった。

 全国各地、多くの自治体から声を掛けて頂いているので、「ご当地ストロー」で地産地消のモデルを広げていければと考えている。杉は、地域によって色も香りも違う。印字をすれば、お土産にもなると思う。

竹田さん自身、環境のために日常で気を配っていることは。

 環境に配慮した商品を選ぶようにしている。チャレンジする企業を応援したい。今日(取材時)着ている服も、ペットボトルをリサイクルして作られたものだ。少し高くてもエコな素材の商品を買う、使い捨てプラスチック製品を持たない、ホテルのアメニティーを使わないなどを心掛けている。服を買い替える頻度も控えて、レジ袋や紙袋の代わりに以前から持っていた風呂敷を持参している。

 ただ現実は、日々生活するのに精一杯で環境問題を考える余裕のない人々も少なくない。環境への取り組みは、強要してはいけない。生活に困っていない、ある程度余裕のある人から積極的に、環境に配慮した製品や企業を支援していかないと、対策は進まないと強く感じる。海外では、思想にかかわらず環境問題を意識するのが当たり前だ。日本でも意識を変えていきたい。ただし、すべての人に押し付けるものではない。

使い捨てプラスチックの代案は。

 自然に返る素材に替えていくことだ。以前、海外ロケで訪れたインドネシアでは、かつて包装にバナナの葉が使われていて、道に捨てても自然に返るため大丈夫だったという。プラスチック包装に変わった今もポイ捨てが習慣化しているため、環境が汚されている。葉でなくても、技術を使って生分解性の素材にすれば、環境負荷は減る。

 これからの子供たちには、使い捨てプラスチック製品を知らない人になってほしい。実際、ストロー自体がなくても飲み物は飲める。木のストローも高齢者や子供など必要な人には使ってもらい、必要ないものは使わないという意識も大切だ。

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