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世界に発信したい縄文文化

争いない持続可能社会実現

北の縄文道民会議事務局次長 戎谷 侑男氏に聞く

 昨年7月、文化庁の文化審議会は北海道と青森、岩手、秋田の1道3県にまたがる縄文遺跡群を「北海道・北東北の縄文遺跡群」として世界文化遺産の推薦候補とすることを決定、今年1月にはユネスコ(国連教育科学文化機関)に推薦書を提出した。2007年に4道県の知事が連携して取り組んできた世界文化遺産登録への歩みが、いよいよ来年度に実現する。そこで改めて「北海道・北東北の縄文遺跡群」の意義と価値、さらにこれからの課題について北の縄文道民会議事務局次長の戎谷侑男氏に聞いた。
(聞き手=湯朝肇・札幌支局長)

豊富な遺物、遺跡
北日本の貴重な財産

長年にわたって取り組んできた「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産登録への取り組みが、実現しようとしています。これまでを振り返ってみてどのような思いでしょうか。

戎谷侑男氏

 びすたに・ゆきお 1946年、滝川市生まれ。北海道中央バス入社。1991年、中央バスグループの旅行会社シィービーツアーズ設立に関わり、2007年代表取締役社長に就任し、現在に至る。たきかわ観光協会副会長、NPO法人北海道遺産協議会理事、北の縄文道民会議事務局次長など多数の役職を務める。

 この運動の発端は、2002年8月に開かれた北海道、青森、岩手、秋田県の4知事サミットに遡ります。そこで、「北の縄文文化回廊づくり構想」が提唱され、それから5年後の07年に4道県で「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産推進を確認したわけです。そこから具体的に民間レベルでの取り組みが始まりました。

 北海道では08年に「北の縄文文化を発信する会」がつくられ、それから5年目に入った12年4月に「北海道・北東北の縄文遺跡群の世界遺産登録をめざす道民会議」(略称、北の縄文道民会議)が結成され、以来、毎年全道各地で縄文祭りやワークショップ、バスツアーなどを開催して、世界文化遺産登録に向け道民運動として盛り上げていきました。そうした中で、18年7月に文化庁文化審議会より20年の推薦候補に選定された時は非常に喜びました。ただ、20年からは文化遺産・自然遺産を問わず審議の対象は1国1件のみとなったため、政府は自然遺産の方を優先して「奄美大島・徳之島、沖縄島北部及び西表島」を推薦したため、私たちの方は後回しになったという感じで、正直ちょっとがっかりしました。それでも昨年7月に文化庁文化審議会が「北海道・北東北の縄文遺跡群」を推薦候補として再選定したわけですから、嬉しさも2倍といったところでしょうか。1万枚の幟(のぼり)を作って大祝賀会を持ちたいくらいの気持ちです。ようやくここまできたという思いを持っています。

そうした中で今年の新型コロナウイルス騒動は、運動にも影響が出ているのではないでしょうか。

 今回の新型コロナウイルスはあらゆる面で影響を及ぼしています。私自身、観光業に携わっていますが、企画した2月、3月のツアーはすべて中止しました。観光業というのは、ホテルや旅館、交通さらに道の駅など各地の名所と連携を取りながら企画を作っていきますので、それらが中止になると至る所に影響が出ます。11年の東日本大震災や18年の胆振東部大震災の時も北海道内の観光業は大きな痛手を被りましたが、今回の騒動はどう収束していくのか先が読めないだけに深刻です。昨年7月の再選定から北の縄文道民会議としてもさまざまな企画を立てていましたが、それもできずにいる状態です。ある意味で、「産みの苦しみ」を味わっている感じです。ただ、終息宣言が出されれば、すぐにスタートできる状態にはなっています。

ここで改めて、北海道・北東北の縄文遺跡群が世界文化遺産になる意義と価値とは何かについてお話しください。

 何よりも縄文文化は1万年もの長きに続いたわが国独自の文化であること。狩猟採集を中心とした文化であるが、無駄に余分なものを獲らず、争いのない時代だったといいます。まさに現在、世界中で推し進めている持続可能(サスティナビリティー)な社会を実現していたという意味では驚くべきことだといえます。1万年続いたということは、縄文人にとってその時代の環境に満足していた、あるいは不自由さを感じなかったともとれますが、急激な進歩を遂げ、競争と軋轢(あつれき)の中で暮らしている現代人が失ったものを有していたと思います。そうした縄文の世界から学ぶものは沢山あるのではないでしょうか。

 とりわけ、北海道・北東北の縄文遺跡群を見れば、津軽海峡を挟んで北海道と北東北で同一の文化圏を形成し、頻繁な交流があったこと。また縄文時代の草創期から晩期の遺跡がきちんと揃っていること。また、遺跡から出る土器や土偶、漆器、装飾具などから豊富な生物多様性の中で、高い精神性を持った暮らしが行われていたことが見受けられるなど、1万年前の縄文文化は、世界に発信するに値する文化といえると思っています。

今後、世界文化遺産登録決定までに何を準備すべきだと思いますか。

 今回、世界文化遺産として登録を目指す遺跡は青森県が8カ所、北海道6カ所、秋田県2カ所、岩手県1カ所が構成資産となっています。このうち、北海道はキウス周提墓群(千歳)、入江貝塚(洞爺湖町)・高砂貝塚(同)、北黄金貝塚(伊達市)、垣ノ島遺跡(函館市)、大船遺跡(同)、鷲ノ木遺跡(関連資産、森町)となっていますが、何よりも遺跡に至るまでの道順をしっかりと整えることが急務でしょう。そのために、国道や道道などには分かりやすく標識を付けること。遺跡場所には管理人の設置やガイドの手配、さらに駐車場やトイレの整備は不可欠です。

 また、北海道には6カ所以外に100以上の縄文遺跡があります。その中には、今回の構成遺産と同じくらい貴重な所もあるわけで、各自治体や教育委員会には、それらの遺跡の遺物を倉庫に保管しておくのではなく、広く公開していただきたいと思っています。そして狭い地域主義にとらわれずに広域的に連携しながら北海道の縄文文化を盛り上げ、世界に発信していくことができればと願っています。

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