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  • 新閣僚に聞く
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  • JAXA宇宙探査計画
  • 2015/12/24
  • 北海道の忠魂碑を訪ねる

    歴史を風化させないで

    北海物流開発株式会社専務取締役 井上 和男氏に聞く

     明治維新以後、わが国は日清、日露、大東亜戦争など外国と大きな戦いを経験した。その都度多くの若者が出征し、戦地で亡くなった犠牲者も数多い。全国各地には戦没者の魂を慰霊する忠魂碑が建立されているが、時代の流れとともに管理そのものが曖昧になっている。そうした中、元自衛官で現在、北海物流開発株式会社専務取締役の井上和男氏は4年半の歳月をかけて北海道内の忠魂碑の所在を訪ねて記録、このたび出版にこぎ付けた。忠魂碑を守る意義について聞いてみた。
    (聞き手=湯朝肇・札幌支局長)

    4年半かけ522基記録
    地域の人々が守ってきた碑

    4年半の歳月をかけて全道の忠魂碑を訪ね、この度、その記録を出版物として著されたということですが、どのような動機で始められたのでしょうか。

    井上和男氏

     いのうえ・かずお 昭和26年2月生まれ。岐阜県出身。45年、陸上自衛隊少年工科学校卒。陸上自衛隊武器学校助教。陸上自衛隊航空操縦士を経て3等陸尉幹部任官。以来、主にヘリコプターパイロットとして陸上自衛隊各部隊で勤務。定年退官後、サッポロビール株式会社北海道本社戦略営業部専任部長を経て北海道物流開発株式会社入社。ほっかいどう学を学ぶ会幹事長、札幌地方隊友会手稲支部長。

     私は元自衛官で在職中はヘリコプターパイロットとして任務に就いておりました。他の職種に比べて危険度の高い仕事ですので、普段から殉職した場合の慰霊の在り方や部隊葬に強い関心を持っていました。退官して制服を脱いだので、私自身は殉職する身ではないのですが、後輩たちを見ていると殉職の可能性があります。一方、これまで自衛官の戦死者は皆無ですが、近年、自衛隊の任務が多様化し、近隣諸国との軋轢(あつれき)が高まっている中で、戦死者あるいは戦没者と呼ばれる人が出てくる可能性があります。万が一、戦死者が出た場合、国や道、自治体あるいは防衛省や自衛隊はその人の名誉をどのように称(たた)えて、慰霊するのか、という疑問を常々持っていました。

     殉職者と戦死者とでは扱いがおのずと違ってくると思います。殉職者は基本的には訓練中、あるいは有事でない災害派遣等で亡くなった人をいいます。一方、戦死者あるいは戦没者は偶発的を含む戦闘などで犠牲になった人で状況が異なります。そうであれば戦没者も今までの「殉職隊員の碑」などと同じ碑で慰霊するのかな、という疑問を持っていました。

     そうした疑問を解消するには過去に学ぶしかない。日清、日露戦争から大東亜戦争までの間に尊い御霊の慰霊はどのようになされてきたのか。戦前、戦中、戦後の混乱期の慰霊の様子はどうだったのか。さらに現在はどうなっているのか。そうした疑問を解くために、これまでの戦没者の慰霊の実態とその象徴である「忠魂碑」を訪ねてみようと考え、全道各地に点在する忠魂碑を巡る慰霊と調査の旅に出たわけです。それが4年半前のことでした。

     ――慰霊と調査の旅に出るといっても北海道は広いですから、大変だったと思います。

     北海道には忠魂碑、忠霊塔、平和祈念塔、戦没者慰霊碑などと呼ばれる忠魂碑が522基ありました。実際には昨年の北海道胆振東部地震で3基が倒壊したので実際は519基ですが、今回出版した本には3基も含めて全て掲載しています。調査を終えて感じたことは、ほとんどの忠魂碑は関係者の努力でしっかり維持管理され、戦没者の尊い御霊は地域の人たちによって慰められていることでした。しかし、少子高齢化と産業の衰退とが相まって地域が衰退化している昨今、例えば神社にある忠魂碑が今後もしっかりと守られていくのか、という思いがあります。地域が衰退し、神社の氏子がいなくなって廃社あるいは移転せざるを得ないとき、誰が忠魂碑を管理していくのか。そうした思いもあって今回の調査を続けました。

    それにしても企業に勤めながらで、しかも資料が少ないとなれば調査も難航したのではないですか。

     自衛隊に勤務していた頃はヘリコプターで全道各地を飛び回り、また、退官後はサッポロビールに勤め全道を回っていましたので北海道の地形や自治体の地名はほとんど把握していました。始めた当初は、2年程かけて回れば一定の成果が得られるだろうと思っていたのですが、その倍の期間がかかりました。やはり北海道は広い。札幌から函館までの距離は、東京から仙台までの距離に匹敵します。また、調査のための資料集めについては札幌の隣町の江別市にある北海道立図書館に通い、各自治体の町史や市史を調べました。

    4年半の調査の中で印象に残ることがあったと思うのですが。

     忠魂碑も勝ち戦と負け戦では忠魂碑の内容が違うと感じました。日清、日露戦争は勝ち戦です。特に日露戦争で203高地での戦いは旭川の部隊である旧第7師団が赴きましたが、北海道から多くの若者が出征して行きました。札幌市厚別区にある信濃神社の忠魂碑は当初、203高地における戦死者4人の慰霊のために建立されたわけですが、その後、戦没者が増加し碑の裏面に6人、台座に254人の戦没者名が刻まれています。

     一方、信濃神社には「七生報国」という慰霊碑があります。これはノモンハンの激戦において20歳で犠牲になられた鷲田光弥さんの霊を慰めるため父であり、旧白石村長だった鷲田彌太郎さんが昭和15年に建立したものですが、題字は陸軍大将男爵荒木貞夫書となっています。もっとも、現在は男爵の「男」と名前の「荒木貞」が削り取られた状態になっていますが、これら忠魂碑の否定は戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の命令によるものだということが明らかになっています。このように忠魂碑一つから歴史の裏側を知ることができるのは非常に意義深いと感じます。

    全道にある522基の忠魂碑を明らかにされました。今後、どのような活動を進めていきたいと考えていますか。

     忠魂碑を調べることが戦没者の名誉を称え、慰霊することにつながると私は考えています。さらに、各地で戦没者の慰霊が現在どのように行われているか明らかにすることが大事であり、風化させてはならない。むしろ国が率先して慰霊に対して積極的な対応を取るべきだと考えています。というのも、戦死者は国の命令で戦地に赴き、そこで亡くなられたわけです。従って、戦死者の行方を明らかにすることはもちろん、国が戦死者の慰霊に携わっていかなければならないことは当然のことと言えます。これまで国が曖昧にして放置してきたことに問題がある。

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