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慰安婦財団調査、韓国は未来志向損ねるのか

 いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる一昨年末の日韓政府間合意に基づき、元慰安婦への癒やし金支給などに向け韓国が設立した「和解・癒やし財団」の活動について文在寅政権が調査を開始するという。文大統領はこれまで繰り返し合意見直しを公言してきただけに財団への調査が「結論ありき」で進められはしまいかという心配が先立つ。

 合意見直しに乗り出す

 調査はこれまで財団が日本側から拠出された10億円を癒やし金として元慰安婦の生存者と遺族に渡してきた経緯などに対するもので、すでに女性家族省に点検班が設置された。これとは別に外務省も合意を検証する作業部会を設置する方針で、いよいよ文政権が合意見直しに乗り出してきたと言えよう。

 もともと癒やし金の申し込み受け付けは6月末で締め切られ、生存者36人も大半が受け取る意思を明らかにするなど財団の活動は一段落していた。10人の理事のうち2人が辞め、その後、金兌玄財団理事長まで辞任している。文政権としては合意見直しに向けた環境が整ったとみて動きだした可能性がある。

 だが、合意に込められた未来志向重視の精神を軽視されては困る。日韓は歴史認識問題でたびたび関係がぎくしゃくし、特に近年は韓国の反日感情だけでなく、日本の嫌韓感情も高まった。それが安全保障や経済など協力すべき分野にまで悪影響を及ぼした。これ以上、弊害が広がるのを防ぐ意味でも合意の意義は大きかったはずだ。

 財団の調査や合意の検証はそれ自体が「最終的かつ不可逆的」解決で一致したことを無視し、問題を蒸し返すに等しい。2国間合意について政権が代わったから、また世論や被害者が反対しているから見直してもいいと考えているとすれば、国際社会では到底理解を得られまい。

 財団の活動が形骸化すれば、在韓日本大使館前の慰安婦像移転も一層難しくなるだろう。財団は記念施設の造成に向け用地選定などにも関わっていた。

 合意の趣旨に沿って黙々と活動してきた財団があまり評価されていないのも残念だ。財団の理事たちは、合意にこぎ着けた朴槿恵前政権が国政介入事件で急速に国民の信頼を失っていく中、反日感情が噴出しやすい慰安婦問題をめぐる事業にボランティアで従事してきた。孤立無援状態で奮闘してきた労をねぎらう声はほとんど聞かれない。

 財団による癒やし金支給をめぐり一部の元慰安婦が受け取り後に返還を申し出て波紋を広げているが、慰安婦問題で反日デモを主導する市民団体、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が受け取りを妨害していることが判明しつつある。今後、財団の活動が萎縮していけば挺対協が勢いづくのは必至だ。日韓関係にとって好ましくないと言わざるを得ない。

 平穏でない安保情勢

 北朝鮮の最高指導者・金正恩朝鮮労働党委員長は核・ミサイルで周辺国を威嚇し続けており、日韓協力の必要性は高まるばかりだ。政権固めへ反日カードを切れるほど北東アジアの安保情勢は平穏でない。文政権には日韓慰安婦合意見直しを思いとどまるよう再考を促したい。

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