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テロ等準備罪、次なる課題はスパイ防止法だ

 テロ等準備罪を新設する改正組織犯罪処罰法が施行された。これで各国と組織犯罪の捜査情報を円滑に共有できる国際組織犯罪防止条約に近く加盟できる。同法を適正に運用し、国際社会と連携してテロ防止に万全を期すべきだ。

 中国の情報活動活発化

 安倍政権は特定秘密保護法、安全保障関連法、そして今回のテロ等準備罪の創設など国民の生命と財産を守る施策を着実に前進させてきた。だが、これでも安全保障の「国際標準」には程遠い。国際社会ではスパイ活動が熾烈(しれつ)だが、その備えが欠落しているからだ。

 米ジャーナリストのビル・ガーツ氏は本紙で、米国内の中国のスパイネットワークは最大2万5000人の工作員、米国で勧誘された要員1万5000人以上を擁し、2012年以降、攻撃的なスパイ活動に転じたと指摘している(7月13日付)。

 中国の情報活動の目的は兵器関連情報の獲得、米高官の買収、政界・実業界エリートの家族の買収、悪意のあるソフトウエアを埋め込み米国のインターネット、重要インフラに侵入することだという。

 スパイ活動の舞台は米国だけではない。オーストラリアではターンブル首相が中国による内政干渉に対抗するためスパイ防止法の見直しを司法長官に指示したと伝えられる。中国共産党とつながるとされる在豪の中国人実業家が、巨額献金で政治介入している実態が豪メディアの調査報道で判明したためだ。

 わが国も例外ではない。12年には在日中国大使館1等書記官による「スパイ事件」が発覚している。書記官は与党有力者らに接触し、農林水産省の機密文書が漏洩(ろうえい)した疑いが持たれた。06年にはヤマハ発動機の無人ヘリコプターの不正輸出事件、07年には自動車部品メーカー「デンソー」の最高機密漏洩事件なども発生している。

 米治安当局の報告書によると、中国は1991年に「西側軍事科学技術の収集利用に関する計画」を作成し、約4000の情報収集団体を組織した。ガーツ氏が指摘するように習近平政権が攻撃的スパイ活動に転換したのであれば、活動の活発化は必至だ。

 どの国もスパイ行為を法律で禁止し、防諜(ぼうちょう)機関を設けて厳しく監視している。米国は連邦法典794条、英国は国家機密法1条、スウェーデンは刑法第19章5、6条にスパイ罪を設け、米連邦捜査局(FBI)や英情報局保安部(MI5)などが取り締まる。

 ところが、わが国にはそうした法律や防諜機関が存在しない。それでやむを得ずスパイ行為に付随する出入国管理法や電波法、外国人登録法などで取り締まってきた。初犯であれば執行猶予の微罪にすぎない。

 民進党は制定に協力を

 中国書記官事件を受け、当時の民主党政権の松原仁国家公安委員長は「(スパイ防止の)法整備は国益を守る上で重要な課題だと認識している」(12年5月31日)と述べていた。民進党がスパイ防止法制定に反対する理由はないはずだ。

 安全保障の次なる課題はスパイ防止法の制定だと心得たい。

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