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訪朝米学生死亡、北朝鮮の人権蹂躙に終止符を

 旅行先の北朝鮮で1年以上にわたり拘束されていた米国人大学生オットー・ワームビア氏が昏睡(こんすい)状態のまま解放され、帰国後に死亡した。

 トランプ米大統領はこの北朝鮮の非道を強く非難し、圧力を強化する構えだが、拉致問題を抱える日本も人ごとではない。北朝鮮でまかり通る人権蹂躙(じゅうりん)に終止符を打つあらゆる努力を惜しんではならない。

正当な理由なき拘束

 ワームビア氏は拘束から約1カ月後に現地で記者会見し、ホテルにあった政治宣伝物を盗もうとしたとして謝罪。国家転覆陰謀罪で労働教化刑15年の判決を受けたというが、拘束に正当な理由があったのか疑わしい。

 これまでにも北朝鮮当局は拘束した外国人や強制送還されてきた脱北者を当局が仕切る会見に出席させ、罪の自白を強要する「やらせ」をしばしば行ってきた。大半は自分たちの体制に背いたと一方的に決め付けた上で厳罰を科すものばかりだ。言い掛かりに等しい。

 昏睡状態に陥った経緯も納得がいかない。北朝鮮当局はボツリヌス菌に感染し意識不明になったと説明したが、帰国後に搬送された病院の医師団は菌の痕跡はなかったと反論。ワームビア氏の脳に損傷が見つかったことについて何らかの原因で呼吸困難になったためである可能性が指摘された。家族は北朝鮮に拷問されたと主張している。

 かつて北朝鮮は日本人拉致被害者の一人、横田めぐみさんのニセの遺骨を日本に渡したことがある。多くの被害者が不自然な事故や病気で「死亡・行方不明」扱いにされた。都合が悪くなれば事実を捏造し拘束者を消してしまうことくらい平気でやる国だ。

 現在、北朝鮮に3人の米国人が拘束されたままだという。人質として米国との政治的駆け引きに利用される恐れがある。トランプ大統領は今回の事件を「完全な侮辱」と非難し、人権問題に敏感な米国社会は北朝鮮に対し怒りを募らせている。米国がすぐ拘束者救出へ実力行使に動くかは不透明だが、北朝鮮がこのまま何の代価も払わずに済むとは思えない。

 日本は拉致問題解決の糸口をつかめない厳しい状況が続く。今回の事件で人権蹂躙を目の当たりにした米国と連携し、北朝鮮への圧力を強めるべきだ。

 一つ気掛かりなのは、韓国・文在寅政権の北朝鮮人権問題に対する姿勢だ。文大統領は盧武鉉政権で青瓦台(大統領府)秘書室長だった時に国連の北朝鮮人権決議案への賛否を北朝鮮に問い合わせ、棄権の判断を下したという疑惑が浮上した。

 軍事独裁政権に反対した韓国民主化運動の人権擁護には熱心でも、北朝鮮国内の人権蹂躙には目をつぶるダブルスタンダードでは民主主義国家のリーダーとして鼎(かなえ)の軽重を問われよう。

密閉された反人権社会

 北朝鮮国内では監視・密告が恒常化し、政治犯収容所では人間の生命権、基本権が侵されて久しい。最高指導者の金正恩朝鮮労働党委員長による粛清を通じた恐怖政治も終わる気配を見せない。北朝鮮という密閉された反人権社会の一刻も早い解放が求められる。

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