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IS「首都」奪還戦、テロ拡散の事態を見過ごすな

 過激派組織「イスラム国」(IS)が「首都」と位置付けているシリア北部の都市ラッカに、米軍の支援を受けるクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍」(SDF)が突入し、奪還作戦は最終段階に入った。ISは全世界で見境なくテロを企てるとみられ、国際社会が結束して対策を強化する必要がある。

 クルド人民兵組織が突入

 イラクとシリアでのIS掃討は、米軍の支援を受けながら昨年10月からイラク北部の都市モスルの奪還作戦をイラク軍などが、11月からラッカの奪還作戦をSDFなどが開始。モスルとラッカをつなぐISの補給路を断ち、両地域を孤立させながら包囲網を狭めてきた。

 今年5月までにモスルの9割をイラク軍などが制圧し、SDFもラッカ市内に進撃した。2013年から14年にかけてイラクとシリアに勢力を広げたISは、「首都」ラッカとイラクにおける最大拠点のモスルを失いつつあり、世界各地からインターネットなどを通じて集めた戦闘員が出身国に戻っている。

 また、シリアではアサド政権を支援するロシアやイランも、欧米と対立しながらもIS掃討には加勢しており、トルコも自国内にクルド民族問題を抱えてSDFとは一線を画しつつもIS掃討に加わった。軍事的敗北で窮地に追い込まれたISはテロによる報復を扇動しており、世界各地でテロ拡散の事態が深刻化している。

 既に英国では5月にマンチェスター市のコンサート会場で22人が犠牲になる自爆テロがあり、ISは「十字軍国民を殺傷」などと犯行声明を出した。ロンドンでも今月、7人が車でひき殺されたり刺殺されたりするテロが発生。英当局は容疑者を危険人物として把握しながらも阻止できなかった。フランスでもノートルダム寺院の前でアルジェリア人の学生がISとの関係をほのめかして「シリアのために」と叫び、警官を襲う事件が起きた。

 また、イランの首都テヘランでは国会議事堂とイラン革命指導者のホメイニ師の廟(びょう)を標的としたテロ事件が起き複数の人が死亡、ISが犯行声明を出している。ロシアでも4月にサンクトペテルブルクの地下鉄で自爆テロが起きた。さらにISの影響を受けた過激派勢力はフィリピン南部やインドネシアでも爆破事件を起こすなど、アジアにも進出している。

 マンチェスターのように、人が集まる劇場や競技場などの「ソフトターゲット」でテロが起きれば犠牲者が拡大する。このためテロ対策は未然に防ぐ早期摘発が死活問題になる。メイ英首相は、テロリストの摘発強化のために人権保護規定が妨げになる場合は人権法を改正する意向を示した。マクロン仏大統領は、ネット上に氾濫するISなどの過激思想の宣伝と戦う必要性を訴えている。

 対策のための態勢強化を

 わが国はテロ拡散の事態を見過ごすことなく、国際社会と結束して対策を怠りなく講じなければならない。参院で審議入りした「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の成立を急ぐとともに、テロ対策のための態勢を強化すべきだ。

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