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猪瀬都知事辞任、東京五輪へ力強い新リーダーを

 これ以上都政を停滞させ、五輪開催準備を滞らせることはできない――。こう述べて東京都の猪瀬直樹知事は辞任を表明した。医療法人「徳洲会」グループから5000万円を受け取っていた問題で、都民に納得できる説明はついぞできなかった。政治は信頼を失えば、立ち行かない。五輪開催は東京だけの問題ではない。国を挙げての環境整備が必要だ。それに相応(ふさわ)しい都知事候補の人選を急ぎたい。

 贈収賄の疑いも浮上

 猪瀬氏は1年前、史上最多の約434万票を獲得して都知事に就任した。今年9月には五輪招致に成功し、2020年を目指して新たなスタートを切ったばかりだった。その出端(でばな)をくじかれた格好だ。

 「アマチュアの政治家だった」では済まされない。5000万円をめぐる疑惑は広がるばかりだ。個人の借り入れというが、釈然としない。選挙資金だったとすれば、公職選挙法に抵触する。東京電力病院売却をめぐる問題も取り沙汰されており、贈収賄の疑いもある。知事を辞任しても真相究明は怠れない。

 辞任を受けて年明け早々にも都知事選が行われる。各党は候補者の人選に入っているが、東京のみならず世界と日本を視野に入れて進めてもらいたい。都知事は五輪開催に向けて「東京の魅力」を発信し続ける「顔」となるからだ。同時に日本の自信を取り戻す国家的事業のリーダーにもなる。

 国と一体で五輪開催の準備を進める必要がある。東京五輪で使用する37会場のうち、22会場は新たに建設する。そのシンボルとなる新国立競技場は国と都が費用を分担する。国はインフラ整備のため圏央道や外環道、首都高などの環状道路の工期短縮を目指す。五輪を支える8万人のボランティアの育成にも乗り出す。さまざまな分野で都は国と協力体制を構築しなければならない。

 それだけに、あらぬイデオロギー対立を都政に持ち込むべきではない。かつて都知事選は「保革対決の場」と位置付けられ、熾烈(しれつ)な選挙戦が行われた。先の特定秘密保護法をめぐる論議で、一部野党やマスコミは冷戦構造を思わせる感情的批判を繰り広げた。

 もとより選挙は民主主義の基本だが、そうした対立構造を都政に持ち込めば、五輪開催の準備に支障を来す。

 五輪事業は震災対策と併せて取り組む必要もある。折しも、首都直下地震で死者が最悪2万3000人に及ぶとの新たな被害想定も発表された。強固な防災都市づくりは喫緊の課題だ。

 また、五輪を21世紀型の成熟した都市づくりの契機にすべきだ。東京都の高齢化率は約22%で、都内には全国最多の280万人の高齢者が住んでいる。20年には321万人に達し、一人暮らしの高齢者は84万人に上る見通しだ。競技施設建設やインフラ整備だけでなく、地域の支え合いをどう編み直していくかも問われることになる。

 課題に果敢に挑む人物を

 都知事は多岐にわたる都政の課題に果敢に挑み、五輪開催に向けて指導力を発揮しなければならない。そんな候補者を選びたい。

(12月20付社説)

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