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日本とASEANとの対中牽制の意義は大きい

 安倍晋三首相はこのほど東京で開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)との特別首脳会議で「海上の安全、航行の自由、国際法の原則に従った解決の重要性」を強調する共同声明を発表した。

 名指しを避けたとはいえ、軍事力を背景に東シナ海などで勢力拡大を図る中国を牽制(けんせい)するものであり、適切な声明として評価したい。

各国間では温度差も

 折しもケリー米国務長官がベトナムとフィリピンを相次いで訪問し、高速巡視船や資金援助など、海上保安の支援策を表明した。日米が時を合わせて、対中牽制のために東南アジア諸国への支援で共同歩調を取ったことを歓迎したい。

 対中関係で現在最も警戒すべきは、中国政府がわが国固有の領土である尖閣諸島を含む東シナ海に一方的に防空識別圏を設定したことだ。これは絶対に認めることはできない。中国は速やかに撤回すべきだ。

 中国を抑止するには日米の緊密な意思疎通が求められる。引き続き日米が情報交換を密にすることを望みたい。さらに必要なのは、日本とASEAN加盟各国との連携強化だ。特に、フィリピンとベトナムは中国との間に領有権問題を抱えている。

 安倍首相は再登板後1年足らずで東南アジアを5回訪問し、ASEAN加盟10カ国全てに足を運んだ。東南アジアで影響力を増す中国に対抗し、巻き返しを図る姿勢を示したものだ。

 特別首脳会議後の記者会見で、安倍首相は「南シナ海の問題では、すべての関係国が力による一方的な現状変更に訴えることなく、国際法を順守すべきだという点で一致した」と強調した。国際法の普遍的な原則に基づく、紛争の平和的手段による解決を強調することで、中国を牽制した意義は大きい。

 一連の首脳外交では、多くの面での協力拡大が表明された。安全保障面で、安倍首相は日本・ASEAN間の防衛相会議の開催を提案した。また、首相はフィリピンのアキノ大統領との会談で巡視船の供与で合意し、甚大な台風被害からの復興のため400億円超の追加支援を行う方針を伝えた。

 防災分野では、災害に強いインフラ整備のため、ASEANに対する約3000億円の政府開発援助(ODA)供与を表明した。さらに2020年の東京五輪開催をにらみ、ASEAN地域の芸術家ら1000人以上を招いて日本の文化人と交流する機会をつくることも計画されている。経済や安全保障だけでなく、文化の面でも協力の裾野を広げようとするものであり、歓迎したい。

 ただ、ASEAN各国間で対中関係には温度差がある。中でもカンボジアやラオスは「中国寄り」とされる。共同声明で中国の名指しを避けたのは、こうした国々に配慮したためだ。

慎重さが求められる

 性急に「対中包囲網の形成」を求めれば、ASEANは日本と距離を置きかねない。この意味で、対ASEAN外交には慎重さが求められる。

 焦らずに、各国への支援を通じて関係を深めていくことが重要だ。

(12月19日付社説)

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