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フィリピンの対中外交、「力による変更」を容認するな

 フィリピンのドゥテルテ大統領は訪問先の中国で習近平国家主席と会談し、南シナ海問題の解決に向けてアキノ前政権下で冷え込んだ関係を修復することで合意した。

 だが、南シナ海での中国の主権を否定した7月の仲裁裁判所の判決を棚上げすることは、中国の「力による現状変更」を容認し、地域を不安定化させることにつながりかねない。

ドゥテルテ氏「米と決別」

 中比首脳会談で、フィリピンは中国に南シナ海問題の解決を強く求めず、中国によるインフラ建設など巨額の経済支援という実利を優先させた。両国の共同声明では、仲裁判決に直接言及せず、友好関係を前面に打ち出した。

 看過できないのは、ドゥテルテ氏が北京でのビジネス会合で「軍事面でも経済面でも米国と決別することを発表する」と表明し、同盟国米国からの「離反」を鮮明にしたことだ。こうした姿勢を続ければ、南シナ海問題の交渉が中国主導で進む恐れが強くなる。

 ドゥテルテ氏の「離反」の背景には、旧宗主国の米国への反感が強い上、こだわりがある麻薬対策の強権的な手法を「人権弾圧」とオバマ米大統領に批判されたことがある。一方、中国は麻薬対策に関して「理解し、支援する」としている。

 しかし、中国による南シナ海の軍事拠点化は決して容認できない。「法の支配」に反するだけでなく、航行の自由や地域の安定を損ないかねない。

 そもそも米比の軍事協力が進んだのは、2012年に中国が南シナ海・スカボロー礁の実効支配を奪ったのが直接のきっかけだ。アキノ前政権は中国側と「50回」(デルロサリオ前外相)直接交渉したが、らちが明かず、国際仲裁手続きに踏み切った経緯もある。フィリピンは中国の「力による現状変更」を阻止するため、米国との軍事協力を継続するとともに自らが勝訴した仲裁判決を強く主張すべきではないのか。

 フィリピンの民間調査機関による世論調査では、55%が中国を「ほとんど信用できない」と回答するなど、比国民の対中不信感は根強い。デルロサリオ氏は、ドゥテルテ氏について「長い間の信頼できる同盟を脇に追いやり、国際法を無視する隣人を受け入れている」とし、親中的な姿勢への懸念を表明。中国への急接近は「賢明ではなく、理解できない」としている。ドゥテルテ氏は、こうした国内の声に耳を傾ける必要がある。

 もっともドゥテルテ氏の米国との決別宣言は、中国からの経済協力や南シナ海問題での譲歩を引き出すための「リップサービス」との見方もある。中国でさえ、真意を測りかねている面があるのは確かだ。だが、こうした不用意な発言はフィリピンを支援してきた日米との関係を不安定化させて中国を利する結果となる。ドゥテルテ氏の大統領としての資質も問われよう。

日米との連携が重要だ

 中国の強引で一方的な海洋進出を阻止するには、引き続き日米比の協力が求められる。安倍晋三首相は、25日に来日するドゥテルテ氏に日米比の連携の重要性を強調すべきだ。

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