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有識者会議、皇室の伝統踏まえ徹底論議を

 天皇陛下が生前退位の御意向を滲(にじ)ませたお気持ちを表明されたのを受け、政府が設置した「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が初会合を開いた。象徴としての在り方、そしてわが国の国体に関わる重大なテーマであるだけに、拙速にならぬよう、徹底した議論が求められるところだ。

 首相「予断持たずに」

 初会合では、メンバー6人のうち今井敬経団連名誉会長を座長に、御厨貴東大名誉教授を座長代理に選任した。さらに①天皇の役割②天皇の公務③公務負担軽減④摂政の設置⑤国事行為の委任⑥退位の是非⑦退位の制度化⑧退位後の地位や活動――以上8項目について、11月中に憲法や歴史、皇室制度の専門家十数人を招いて意見聴取することを決定した。

 初会合に出席した安倍晋三首相は「陛下が82歳と御高齢であることも踏まえ、どのようなことができるか、専門的な知見を有する方々の意見も伺いながら静かに議論を進めていきたい」と語った。

 有識者会議のメンバーは、今井座長、御厨座長代理のほか、小幡純子(行政法)、清家篤(労働経済学)、宮崎緑(国際政治学)、山内昌之(中東・イスラム研究)の各氏で、広い見識の持ち主である。とはいえ、憲法や日本史、皇室の専門家というわけではない。

 提言のとりまとめは、来月3回にわたって行われる専門家の意見聴取がベースになると思われるが、まずはその意見に注目したい。安倍首相は「予断を持つことなく十分審議し、国民のさまざまな意見を踏まえて提言をとりまとめてほしい」と要請している。

 新聞報道などでは「生前退位」は既定路線との印象が強いが、「予断を持つことなく」という安倍首相の言葉を素直にとれば、有識者会議の議論は「生前退位ありき」とすべきではない。一つ一つ段階を踏んで進めていく必要がある。

 天皇陛下は象徴天皇の在り方を真摯(しんし)に追求し、ふさわしい御活動をしてこられた。お気持ちの表明の中では、御加齢によって「これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」と語られた。

 国事行為、公務、祭祀(さいし)など天皇のお務めは実に多く、御高齢の陛下がそれらすべての負担を負われるのはどう考えても無理がある。公務負担軽減や国事行為の委任などは現実的な対処法として検討すべきだ。

 また象徴としての在り方、天皇の役割、本質という点では、万世一系の皇統を受け継がれる存在そのものの尊さがまずある。そして国家の安寧と国民の幸せを常に祈られる存在であられることが、何より国民にとってはありがたいのである。

 政争の弊害除去した典範

 現在の皇室典範に「譲位」の規定がないのは、過去の歴史において、時の権力者の思惑によって「譲位」を強いられるなど、皇位継承が政治的争いに巻き込まれる弊害を除くための知恵でもあった。そのような歴史的背景も踏まえ、徹底した議論が求められる。

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