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中国の南シナ海の実効支配に道開く重大な懸念

 シンガポールでアジア安全保障会議が開催された。この会議は、アジア太平洋地域を中心とした国防関係者が地域の安全保障問題について意見を交換する会合だ。「シャングリラ対話」とも呼ばれている。

 米が“孤立の長城”と警告

 今年の会議で目立ったのは、国際世論を無視した中国の南シナ海での強引な振る舞いに対する批判の高まりと、それによる中国の孤立化だった。

 カーター米国防長官は海洋進出の動きを加速させている中国に、万里の長城を引き合いに出して「自らの孤立を招き、“孤立の長城”を築くことになろう」と警告するとともに、米国やアジア太平洋諸国との協調を呼び掛けた。

 これに対し、中国の中央軍事委連合参謀部の孫建国副参謀長は「中国は孤立していない。彼の話は間違っている」と述べ、強く反発した。軍の別の高官も「孤立しているというのはでっち上げで、中国を孤立させようという目的による発言だ」と反論した。

 だが、この反論は説得力がない。南シナ海の全域を中国の管轄下とする主張はあまりにも非常識で強引だ。フィリピンが「不当」としてオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所に提訴しているのも当然で、提訴は多くの国の支持を受けている。

 中国は4月以降、ロシアや中央アジア、中東、アフリカの国々と会談。中国外務省は先月20日の時点で、南シナ海をめぐる問題で「40カ国以上から支持を得た」と発表した。支持を広げようと躍起になっているようだが、会談した国々のほとんどはこの問題と直接の関係はない。

 中国は、常設仲裁裁判所から近く出される見通しの自国に不利な判断を「受け入れない」としており、“国際的な司法判断を受け入れなかった事例は、米国を含め、過去にも多数あった”とする主張を展開している。中国南シナ海研究院の呉士存院長は「国際的な前例では、司法判断に従わなかった国々が国際法や国際秩序に挑戦したなどとは言われていない」と述べ、裁判を無視しようとする中国の立場を正当化している。

 中国はこの1年、南シナ海での海洋進出を加速化させてきた。例えば、南沙(英語名スプラトリー)諸島に造成している人工島の面積は、昨年末の時点で前年の6倍に当たる13平方㌔になっている。軍用機も使用可能な3000㍍規模の滑走路が3本建設され、通信システムや補給施設などの整備も最終段階に入っていると言われる。

 米国が警戒を強めているのが、フィリピン・ルソン島に近いスカボロー礁をめぐる中国の動きだ。中国が実効支配するこの海域で今年3月、中国による測量活動が確認され、新たな埋め立て工事に着手するのではないかとみられている。

 航行の自由を維持せよ

 スカボロー礁と西沙(英語名パラセル)諸島、南沙諸島を線で結ぶと、この海域を取り囲む三角形が出来上がる。中国が南シナ海全体を監視し、支配する能力を得ることが懸念される。米国をはじめとする関係国は、航行の自由を維持するための取り組みを強化する必要がある。

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