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日露首脳会談、領土交渉前進に全力尽くせ

 安倍晋三首相はロシア南部の保養地ソチでプーチン大統領と会談し、停滞する北方領土交渉を前に進めるため、8項目の経済協力プランを提示した。ウクライナ問題を受けた欧米の対露経済制裁に足並みを揃(そろ)える中での苦渋の選択と言えよう。わが国はロシアとの対話を通じ北方領土問題解決に全力を尽くすと同時に、ウクライナ問題の解決を強く働き掛けるべきである。

孤立打破を狙うロシア

 北方領土返還に向けた日露交渉は、プーチン政権下で大きく減速した。特にわが国が対露経済制裁に加わった後は、その強硬姿勢を一層強めた。

 日本の再三の中止要請を無視してロシアのメドベージェフ首相がわが国固有の領土・択捉島を訪問したのに続き、日露交渉を担当するモルグロフ次官は公式見解として「(領土問題を)協議するつもりはない。70年前に解決済み」と表明するに至った。昨年中のプーチン大統領の訪日も見送りとなった。

 ロシアがこのような強硬姿勢に出る背景には、経済制裁に加わった日本に対する「逆恨み」の要素があろう。

 ロシアは主要輸出品である原油の価格低迷により景気が大幅に悪化し、これに経済制裁が追い打ちをかけている。昨年のロシアの経済成長率はマイナス3・7%、一方でインフレ率は15・79%に達した。

 通貨ルーブルは昨年末、クリミア併合前の2014年1月と比べ、対米ドルで4割程度まで暴落した。物価が高騰し、また、外貨建て住宅ローンを抱える人々は返済が困難となり、銀行に押しかける騒ぎも起きた。

 プーチン政権は主要マスコミを事実上の統制下に置いており、メディアを通じて国民の愛国心を煽(あお)ることで、高い支持率を保っている。しかし、不況が長引く中で、国民の不満が政権に向かないとは限らない。

 プーチン政権はわが国を取り込むことで、国際的孤立の打破や、極東のエネルギー開発を加速しロシア経済の浮上を図る目論見だ。だからこそプーチン大統領は安倍首相の訪露を歓迎し、安倍首相が呼び掛けた、領土問題解決への「新しいアプローチ」に賛同したのだ。

 この日露首脳会談について、米国のオバマ大統領は「G7の結束を乱す」として強い難色を示していた。また、欧米諸国と足並みを揃える対露経済制裁との整合性も問われよう。

 だが、北方領土返還の実現はロシアとの交渉によってのみ可能となる。ロシアとの交渉のパイプを閉ざしたままの状態を続けることはできない。今回の訪露は、これらの事情をすべて理解した上での決断であろう。

 両首脳は9月にロシア極東のウラジオストクで改めて会談することでも合意した。ロシアは一筋縄ではいかない相手である。わが国は以前にも増して対露交渉での微妙なかじ取りを求められることになる。

ウクライナ問題解決促せ

 わが国がなすべきことは、ロシアとの関係拡大を通じ、北方領土交渉を加速するだけでなく、ウクライナ問題の解決をロシアに強く働き掛けることである。それは、欧米諸国の理解を得ることにもつながろう。

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