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重力波初観測成功、「新たな知」への挑戦続けたい

 アインシュタインが100年前に存在を予言した「重力波」の直接観測に成功したと米国の研究チームが発表した。重力波は謎に包まれている宇宙最初期の姿を探る手段となる。歴史的な快挙だ。

アインシュタインが予言

 重力波は、質量を持った物体が運動し、周囲の時空(時間と空間)に生じたゆがみが光速で波のように伝わる現象だ。アインシュタインが一般相対性理論で予言したが、あまりにも微弱なため、高精度の検出装置がないと捉えられない。

 研究チームは二つの大型装置LIGOを使って観測。1辺4㌔のパイプ2本をL字形に配置し、パイプ内でレーザー光線を往復させて重力波による空間のゆがみを検出した。

 LIGOは2002年に観測を始め、10年からは感度向上のために改造を行っていた。昨年9月に観測を再開してすぐに捉えたという。

 研究チームの責任者デビッド・ライツさんは「われわれはついにやった」と喜びを語った。今回の重力波は、ブラックホールが約13億年前に合体した際に生じたものとされている。

 物質との相互作用が少ない重力波の観測で、宇宙誕生直後の姿や、光を出さないブラックホールの誕生の瞬間など、さまざまな現象の解明が可能と考えられる。

 特に、138億年前の誕生から38万年後までの宇宙の姿は謎に包まれている。光では観測できず、これまで天文学で用いられてきた電波やX線でも不可能だった。

 誕生からビッグバンまでのわずかな間に宇宙が急激に膨張したとするインフレーション理論では「原始重力波」が生じたと考えられている。これを捉えれば、謎の解明に向けて大きく前進する。

 日本でも、東京大宇宙線研究所が岐阜県の神岡鉱山地下に「KAGRA(かぐら)」を建設し、ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章所長らが検出を目指している。

 米研究チームの初観測について、梶田所長は「エキサイティングな時代に入った」と語った。今回は先を越された形だが、「重力波天文学」の幕は開いたばかりだ。今後の研究の進展を期待したい。

 重力波を生み出したブラックホールの合体が宇宙のどこで起きたかを知るには、3カ所以上で同時に観測する必要がある。その意味でも、かぐらの存在意義は大きいと言える。

 神岡鉱山地下には、素粒子ニュートリノの観測装置「スーパーカミオカンデ」もある。重力波とニュートリノを同時に捉えることができれば、新たな発見につながる可能性もある。

 梶田所長は「新しい観測方法が見つかると、宇宙に対する考えを大幅に塗り替えてきた」と話している。LIGOや欧州の「VIRGO(バーゴ)」などと競い合い、あるいは協力して大きな成果を上げてほしい。

基礎研究への支援充実を

 科学者が「新たな知」への挑戦を続け、日本で偉大な発見をすることができるように、政府は基礎研究への支援を惜しむべきではない。

(2月16日付社説)

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