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露首相択捉訪問、許されない不法占拠正当化

 ロシアのメドベージェフ首相が、わが国固有の領土である北方領土の択捉島を訪問した。不法占拠を正当化するものであり、断じて容認できない。

若い世代に開発呼び掛け

 メドベージェフ氏は先月末から北方領土訪問の意向を示していた。岸田文雄外相が「ロシア要人による北方領土訪問は、静かな環境の中で政治対話を進めるという首脳間の一致に沿わないものだ」と述べるなど、日本側は再三中止を要請したが、聞き入れようとしなかった。

 メドベージェフ氏の訪問は、これで3度目だ。大統領だった2010年の国後島行きは、ソ連時代を含め国家元首としては初めての北方領土訪問だった。首相就任後の12年にも国後島を視察している。今回は、択捉島で開かれている愛国集会「全ロシア青年教育フォーラム」への参加が目的だった。

 参加者には「極東で一番重要なのは予算ではなく人材だ」と指摘し、若い世代に極東開発への参加を呼び掛けた。昨年3月のウクライナ南部クリミア半島併合、旧ソ連の対ドイツ戦勝70年で高揚する国民の愛国心を背景に、若い人材を北方領土を含む極東に向かわせ、4島支配を固定化する狙いだろう。

 また、島内の水産工場や港湾施設などを視察。外国からの投資に対しては「一番乗りが利益を得るのが原則だ。日本の隣人でも、中国や韓国の友人でも良い」と述べた。あえて「隣人」と「友人」と区別して日本を牽制(けんせい)した形だ。

 しかし北方領土は、旧ソ連が70年前の1945年8月9日、当時有効だった日ソ中立条約を一方的に破って不法占拠した日本固有の領土だ。ロシア側にどのような言い分があっても、正当化することはできない。

 安倍政権は北方領土問題解決に向け、ロシアのプーチン大統領の年内訪日実現を目指し、その環境整備のために岸田外相を今月下旬から来月上旬にもモスクワに派遣することを調整していた。しかし、ロシアの誠意が疑われる状況では難しいと考えざるを得ない。ロシアでは、希望する国民に北方領土を含む極東の土地を分与する制度も年内にスタートする見通しだ。

 日本はウクライナ危機後、欧米諸国とともに対露制裁を行っている。メドベージェフ氏の択捉訪問には、欧米に同調する日本を揺さぶる狙いもあろう。だが、クリミア併合も北方領土の不法占拠も、ロシアの「力による現状変更」にほかならない。日本がロシアに厳しい姿勢を示すのは当然のことだ。

 ロシアは、南シナ海などで「力による現状変更」を進める中国と連携強化の構えを見せている。現在、中露両国は日本海で合同軍事演習を行っている。プーチン氏は、中国が9月3日に開く抗日戦争勝利70年記念行事に参加する予定だ。両国は歴史問題でも日本への圧力を強めるものとみられる。

政府の対露交渉支えたい

 日本は北方領土返還を粘り強くロシアに求めていかなければならない。

 8月は北方領土返還運動全国強調月間でもある。国民が政府の対露交渉を支えていくことが重要だ。

(8月23日付社説)

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