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辺野古工事中断、円満な移設のため生かせ

 政府は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の同県名護市辺野古への移設工事を10日から1カ月間中断することを決定した。辺野古移設に反対する翁長雄志知事との全面対決を避けるためだ。円満な移設のための苦渋の決断として理解できる。

知事に決定権はない

 安倍晋三首相は翁長知事と会談し、辺野古移設に関する政府と県の集中協議が始まることを踏まえ、「話し合いの中で、議論を深めてもらいたい」と要請した。会談後、翁長氏は「決裂とかは考えず、私どもの主張に触れながら、理解いただくように話をしたい」と述べた。

 もっとも辺野古移設は日米両政府が合意したものであり、移設の決定権は知事にはない。安全保障の実効性を高める責任は国が担うものである。翁長知事は一知事としての分をわきまえるとともに、国の安保についても考えるべきだ。

 工事を中断しても、辺野古移設が普天間問題の唯一の解決策である点に変わりはない。普天間飛行場周辺には学校や民家が密集しており、「世界一危険な米軍基地」とされている。万一、事故でも起これば住民の反米感情が一気に高まり、沖縄での米軍基地の存続が困難になりかねない。

 さらに戦略的見地からの重要性もある。中国や北朝鮮の脅威に対処する上で、米軍は沖縄に基地を必要としている。日米安保条約の下、日本防衛の任に当たっている米軍の戦略的要請に応えつつ、基地の危険性を除去するという要件を満たすには、辺野古移設が最も現実的だという事実を忘れてはならない。

 だが、基地については地元の理解も重要だ。1カ月間の中断期間は地元との対話のまたとない機会だ。翁長知事はこの期間中、仲井真弘多前知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認の取り消しを見合わせる方針を表明した。

 政府は辺野古移設推進の立場に変化がないことを説明しなければならない。沖縄県側の考えを聞きつつ、在沖米海兵隊の役割などについて政府の見解を示し、地元との相互理解を深めるべきである。

 普天間問題をここまでこじらせた原因の一つは、民主党政権時代の無責任な公約である。同政権は移設先について「最低でも県外」と明言し、沖縄県民の期待を膨らませたが、結局公約は守られなかった。

 このため、県民の政府に対する不信感は強い。米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間配備をめぐる反対運動でも反政府ムードが盛り上がった。

 沖縄には先の大戦中に本土防衛のための盾にされ、多大の犠牲者を出したという被害意識が強い。それに加えて戦後は米軍専用施設が集中し、負担を一方的に押し付けられているとの思いがある。

政府は懇切丁寧な説明を

 だが、中国や北朝鮮の脅威の高まりの中で沖縄の米軍基地の重要性は増している。最大の抑止力である日米安保体制の強化のために作業中断の1カ月間、辺野古移設がいかに重要かを政府は沖縄県側に懇切丁寧に説明すべきである。

(8月8日付社説)

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