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拉致再調査、成果なければ対北制裁復活を

 日朝協議で、宋日昊・日朝国交正常化交渉担当大使から日本側に、北朝鮮による拉致被害者らの再調査の詳細について、平壌に日本政府の担当者を派遣して特別調査委員会から直接報告を受けるよう提案があった。

 政府は調査団の派遣に向け調整を進めているが、何も情報がない中で訪問すれば北朝鮮のペースに乗せられかねない。訪朝で成果がなければ、対北制裁を復活すべきである。

 政府は調査団派遣の方針

 北朝鮮の特別調査委は①拉致被害者②行方不明者③日本人遺骨問題④日本人配偶者――に関し、それぞれ責任者を置いて7月初めから同時並行で調査を進めている。だが現段階では、日本が調査団を派遣しても拉致被害者についての具体的情報が得られる見込みは薄く、逆に拉致問題で北朝鮮に主導権を握られる恐れがある。

 拉致被害者らの家族からは「調査委に会うためだけの訪朝は効果がない。逆にリスクが生まれる」「北朝鮮のペースに巻き込まれる」といった反対の声が上がっている。当然の危惧だ。

 そもそも北朝鮮は拉致被害者の現状について把握しており、再調査の必要はないはずだ。再調査と言っているのは、それによって制裁の追加解除などを狙ってのことだろう。

 調査団派遣について、政府は必ずしも一枚岩でないようだ。関係省庁内では「成果がなければ家族会が納得しない。中身のない北朝鮮の再調査を政府が認めることになる」と懸念する声もある。

 我々が求めているのは、北朝鮮が自ら行った国家テロの犠牲者である拉致被害者について納得できる全面的な報告をすることである。さらに拉致被害者全員の速やかな帰国である。この点での妥協はあり得ない。

 政府が調査団派遣の方針を決めたのは、実際に調査する特別調査委のメンバーと顔を合わせることでパイプ作りができると考えているからだという。再調査を前進させることを期待してのことだろう。だが、それだけでは不十分だ。

 北朝鮮を動かすテコとして最も効果的なのは経済制裁だ。訪朝で拉致被害者についての報告が得られなかったり、その内容が納得できるものでなかったりした場合のために制裁再発動を準備しておくべきであろう。

 我々は苦い経験を忘れてはならない。2004年11月、当時アジア大洋州局審議官だった斎木昭隆外務次官は藪中三十二アジア大洋州局長とともに平壌を訪れた。拉致被害者らについての北朝鮮の説明内容を直接検証するためだった。

 北朝鮮が「死亡」「未入国」などと主張した横田めぐみさんら拉致被害者の情報について責任者から意見を聞いた。しかし帰国後の検証で、北朝鮮が提供しためぐみさんの「遺骨」からは、めぐみさんとは異なるDNAが検出された。

 策略への警戒が必要だ

 北朝鮮は平気でウソをつく国である。政府が北朝鮮に調査団を派遣しても、どのような策略が待ち受けているか、要警戒である。

 調査団は北朝鮮に対して毅然(きぜん)とした姿勢を貫くべきだ。

(10月3日付社説)

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