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露長官択捉訪問、これでは孤立を深めるだけだ

 ロシアのプーチン大統領の最側近であるイワノフ大統領府長官が、我が国固有の領土である北方領土・択捉島を訪れた。日本側の抗議を無視し、今後も訪問を続けるという。

 大統領側近がこの時期に北方領土を訪問したことは、ウクライナ問題でロシアと対立する主要7カ国(G7)との連携を強める日本を牽制する意味合いが強い。だが、これではロシアの孤立を深めるだけだ。

対日牽制の意味合い

 イワノフ長官は、択捉島に完成した新空港を視察した。ロシアの閣僚級としてはおよそ2年ぶりの北方領土訪問となる。イワノフ氏は記者会見で、ショイグ国防相も近く択捉島を訪れると明らかにした。

 我が国固有の領土に対する、このような行為を看過するわけにはいかない。菅義偉官房長官が「絶対に受け入れられない。極めて遺憾だ」と強く批判したのは当然のことだ。

 これに対しイワノフ氏は「訪問のたびに日本から遺憾の意を聞いた」「儀式のようなものだ。今後も訪問して住民の声を聞くつもりだ」などと述べ、日本側の抗議を皮肉った。

 安倍晋三首相とプーチン大統領は2013年9月の首脳会談で、北方領土問題をめぐる交渉について「友好的で、静かで、落ち着いた雰囲気の中で話し合いを進め、進展することを期待したい」との考えで一致した。日本の抗議を無視し、ロシアの閣僚が北方領土訪問を強行する中で、ロシアはどのようにして「友好的で、静かで、落ち着いた雰囲気」をつくると言うのだろうか。

 ロシアは、日露が「今秋」で合意していたプーチン大統領訪日を見送る構えだ。今年11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議時の日露首脳会談開催にも消極的だ。

 ウクライナ問題でロシアが欧米と対立し、日米などG7はロシアを除外して首脳会談(サミット)を開いた。対露制裁でも日本はG7との連携を強めている。ロシアにはロシアなりの言い分があるのだろう。しかし、武力を背景にした国境変更は許されない。

 それはプーチン大統領も分かっているのではないか。ウクライナのクリミア半島をロシア軍が掌握した後の3月5日、プーチン大統領は「(ロシアが租借している)セバストーポリ海軍基地と、クリミアの特別な地位についてウクライナと協議する必要がある」とした上で「クリミアの併合は検討していない」と語っていた。

 だがその後、ロシア、クリミア双方の住民の熱狂的な声に押される形で併合に踏み切った。これが国際社会との対立を決定的なものとし、対露制裁を招いた。プーチン大統領は国内世論の圧倒的な支持を背景に、欧米との対決で強気の姿勢を崩していない。しかし、金融・経済分野の制裁はロシアを静かに締め付けつつある。

責任ある行動を望む

 北方領土交渉でもウクライナ問題でも、我が国はロシアが責任ある国家として行動することを望んでいる。プーチン大統領はそれを理解すべきだ。

(9月27日付社説)

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